第6章 流されて異界
第136話 大元帥明王呪
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っているだけの存在かのどちらか。
ただ、どちらにしてもヤツは既に堕ちている。少なくとも真っ当な人間の精神や感情を持って居ない事は間違いないでしょう。
「そうか――」
後ろを振り返る事もなく、彼女に話し掛ける俺。三歩分だけ前に……つまり、犬神使いへと近付きながら。
「これから、彼奴がお前の弟か、それとも違うのかを調べる」
但し、もし、それで彼奴が平良門の転生体だと言う事が分かったとしても、俺はヤツを封印する作業を止める事は出来ない。
それまでの強い言葉などではなく、むしろ優しげな声、と言う声で続ける俺。
そう、この事件は俺一人の胸に終って置く事が出来る事件のレベルを超えている。表の世界で、既に無関係の四人の人間が死んでいるから。
まして、水晶宮と天の中津宮の方には援護の依頼を行って、既に人員の投入も為されている。当然、その際に、これまで調べた事件のあらましは既に報告してある。それでなければ、簡単に人員の投入は為されませんから。
この状態では、事件を有耶無耶の内に終わらせて仕舞う事が出来る訳はない。
おそらく、何らかの報告の義務が俺たち……この事件に関わったSOS団関係の術者には発生して、その顛末をそれぞれが所属する組織へと報告しなければならなくなるのでしょう。
最終的には日本の霊的な部分を支配している天の中津宮にも、当然のように、その内容は報告されるはずです。
確かに、これは殺人事件としては立件不可能な事件です。そもそも、その事件を起こした存在が平安時代に生きていた人間が悪霊化したモノで、人を殺した方法が呪詛では、現在の法律ではどうしようもない。
おそらく、直接、事件を解決……封印された犬神使いの処理は水晶宮の方で担う事となるのでしょうが、その後に封印された犯人の引き渡し要求が天の中津宮の方から為される事となって終わり。当然、最初の穢れを払うのは現地に居る俺たちの仕事と成りますが、乱れた地脈の調整などの厄介な仕事は天の中津宮の仕事と成ると思います。
これだけの事件を俺一人の胸の内に納めて終わらせる。流石にそれは無理。もう、そのレベルは越えていますから。
「但し、もし良門だと判明した時には、オマエをその結界から解放してやる」
解放した後は、どうしようとオマエの勝手。彼奴を説得しようと、俺の邪魔をしようと、そのまま――今、彼奴がそうしているように、何もせずに見て居ようと、さつきの好きにしたら良い。
優しげな言葉。但し、これは事実上、もしさつきが敵となった場合、次は本気で相手をする、と言う意志を表明したのに等しい内容。
俺がもし自らの関係者が事件を……自分勝手な理屈と目的で他者を殺めた時にどうするか。それを考えると、精神支配を解かれたさつきがどう言う
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