暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第136話 大元帥明王呪
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では語られている術式。

 そう、()()()()()()のです。物語には、その物語を知っている人間が多ければ多いほど、更にその物語が古ければ古いほど、周りに対して強い影響を与えるようになる能力がある。今回の場合だとそれが、平将門の加護を得ている相馬さつきの能力を無力化する、……と言う方向に影響を与えたと言う事。

 そして弓月さんが唱えた稲荷大神秘文と、俺が唱えた祈りの詞は、ほぼ同じ存在に対する呪文と言われている物。
 元々秦氏族……弓月の姓を名乗る彼女の家も、男系で言えば秦氏族系。その秦氏が景教を日本の神道の源流に紛れ込ませたと言われている呪。
 それがこの稲荷大神秘文。

 つまり、今の俺……ヘブライの神に見込まれ、聖痕を刻まれた俺に取っては一番行使し易く、更に効果の期待出来る浄化の術だった、と言う事。
 確かに術以外による洗脳だった場合、一切効果を示さない可能性も有りました。……が、しかし、さつきを自由に動かせる駒プラス失っても惜しくない人質。つまり、時間稼ぎ要員と犬神使いが考えて居たのなら薬物などを使用した洗脳は行わない、と考えてこの術を解放の切り札としたのです。
 ある程度の意識を残さなければさつき自身の術の行使は不可能ですし、長時間のすり込みなど流石に無理だったはず。それなら、何かを。自分の思い通りに操る事が出来る何モノかを憑ける方が話は早い。
 おそらく、先ほどまでの彼女は犬神憑きと言う状態だったのではないでしょうか。

 仮に失敗したとしても、大元帥明王呪を解除する方法がさつき達にはないはずなので、犬神使いの封印が終わった後に彼女に掛けられている術の解除を行えば良いだけ、ですし。

 それに……。

「オマエ、彼奴がさつきの弟の訳がないでしょうが」

 アイツはどう見てもオマエよりも年上やで。

 見た目、小学校高学年のさつきに対してそう言う俺。
 ハルケギニアのタバサよりも背が低く、更に女子高校生としては非常に残念な体型。そんな彼女と、多少、印象として小さな感じがしたとしても、相手は一七〇センチほどの身長がある青年。その二人の関係が姉弟って……。
 それは幾らなんでも無理があり過ぎる設定でしょうが。

 ……本当に呆れた、と言う嘲りにも近い色を着けた言葉。

 但し、これは常識と言う枷を自らに嵌めている台詞。少なくとも俺には、彼女の言葉を、科学的に……常識的に考えてあり得ないとして、一笑に付す事が出来ないのは事実です。
 色々と不可思議な柵(前世の因縁)に囚われた俺だけには。

 キッと言う擬音がしっくりと来る視線で俺を睨み付けるさつき。完全に術を封じたはずなのに、彼女の瞳は強い光と、物理的な力とまで感じるほどの威圧感を放っていた。
 正直
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