第6章 流されて異界
第136話 大元帥明王呪
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どう言う事なの?」
怒り、と言うよりは驚いたと言う雰囲気で大きな声を上げるさつき。同時に力任せに腕を動かそうとするが、しかし、そんな物ではびくともしない光の環による拘束。
「悪いな、さつき。もう少しそのままで我慢して貰えるか」
あの犬臭いヤツを封印したら解放してやるから。
自らの身体を少し脇に退けながら、そう話す俺。その俺の身体に隠されていた場所。日本の神道の聖域に等しい注連縄と祭壇に守られ、四方に立つかがり火の灯りにより照らされた場所には、古の蛇神アラハバキを迎える為の祝詞を唱え続ける犬神使いの青年の姿が存在している。
時刻はそろそろ夜中の一時過ぎ。おそらく、今年の冬至が始まるまでの時間は後十五分を切って居るはず。
その方向に視線を送るさつき。しかし、その瞬間、また彼女の表情が変わる。
「待って、あの子を封印なんかしないで!」
あの子は私の弟なのよ!
叫びと同時に激しく身を捩る彼女。おそらく、その瞬間に普通ならば彼女の精神の影響を受けて周囲の炎の精霊たちが活性化したのでしょうが……。
「あぁ、さつき。今、オマエさんの術はすべて封じられている。せやから、無駄な事はするな」
そもそも、オマエと俺。一体何度目の直接対決だと思って居るんだ?
かなり呆れた雰囲気でそう言う俺。但し、さつきの方から言えばおそらく二度目。それも、一度目に関して言うと、直接刃を合わせた訳ではなく、闘気をぶつけ合っただけ。故に初めての直接対決だ、と言われても不思議ではない相手だと思う。
但し、俺の方から言えば違う。以前の生命でもさつきとは何度も戦って居る。その度に瞳がふたつに別れるとか、分身が何人も現われるとか、刀や槍などが一切通用しなくなる、などの平将門の加護を得られていた状態の彼女と戦わされたら、その内に対処法を考えるようになって当然。
正面から正々堂々と戦う。……まぁ、それで勝てる相手ならば問題がないのですが、残念ながら彼女はそのレベルの相手と言う訳ではありません。ならば、多少の小細工を行ったり、策を弄したりするのは当然でしょう。
「そのオマエさんの周囲を舞っている風の正体は大元帥明王呪の結界。その結界をさつきの能力や加護でどうにかするのは不可能や」
割とのんびりとした調子で口にしたその術の名前を聞いて、さつきの顔色が変わった。
そう、大元帥明王呪。この術は基本的に鎮護国家や怨敵退散などの呪が籠められた術なのですが、そんな術なら他にいくらでもあります。今回この術を使用した理由は、この術が承平天慶の乱の際に、平将門を討ち取った術だから。
この術の風の封印により術を無力化された将門に対して、藤原秀郷の放った矢が眉間に刺さり死亡した、と一部の伝説
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