暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第136話 大元帥明王呪
[3/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
魅せてくれる事はないので……。

 今のままでは無理だな。やや自嘲気味の笑みで応えながら、思考は其処に到達する。二君に仕えず的な有希や万結が居て、その上にこれ以上何を望むと言うのだ、と言う気分もある。
 それに――
 それに、余裕があると言っても無限に時間がある訳ではない。
 今は目の前の仕事に集中。そう考え、弓月さんに移していた視線を、目の前のさつきに戻す俺。……と言っても、実は現状で多くの選択肢がある訳ではないのだが。

 先ず、今回の邪神召喚が成功する確率は、あの犬神使いの青年が行う、と仮定すると、限りなくゼロに近い確率しか存在しないと思う。おそらく、俺と俺の持って居たアンドバリの指輪に籠められたすべての霊力を一瞬で全開放すれば少しは可能性が上がるか、と言う程度。
 もっとも、そこまでの霊力を解放するのなら、その霊力を素直に攻撃のエネルギーに転化して地球ごと吹っ飛ばせば良いだけなので、掛かる労力と得られる結果に差が有り過ぎて、これは現実的な選択肢とは言えない。

 そうだとすると邪神召喚の失敗が確定するまでの短い間、この場でさつきを守り切れば良いだけ。
 このまま剪紙鬼兵と、その中に最後に投入可能な飛霊二体を召喚してさつきを護らせれば良いか。そう考え、学生服のポケットから数枚の呪符を取り出そうとする。
 その瞬間……。

 はむ……と言う無意味な呟き。四肢を拘束され、未だ大地に両足の届いていない状態。所謂、宙づり状態の少女に目覚めの兆候。
 ……やれやれ。むしろ、そのままで眠って居てくれた方が楽だったのですが。

 少しネガティブな思考。詳しく調べた訳ではないので確実とは言えませんが、外傷などはなし。彼女が発して居る気配は、普段の彼女と比べると多少、霊気が少ないような気がしないでもないのですが、それでも差し迫って生命に危機が訪れるレベルではない。
 ……以上の情報から彼女の無事が確保されただけで十分、と考えて居たのですが。

 ただ、目が覚めて終ったのでは仕方がないか……。

「相馬さん、私たちの事が分かりますか?」

 あ〜だ、こ〜だと俺がグズグズしている内に、近寄って来て居た弓月さんがさつきに対して話し掛けてくれた。
 グッジョブ。俺が話し掛けるよりは余程、話が早い。ついでに角も立たずに済む。

 僅かに開いた瞳でぼんやりと弓月さん、そして、その隣の俺を眺めるさつき。どう見ても未だ夢うつつの状態。
 しかし……。

「……分かるわよ、桜」

 小さくひとつ首肯き、夢見る者の口調でそう呟くさつき。そう言いながら、不自然な形で広げられた両腕を動かそうとして……。
 ――動かない。
 訝しげな表情。そして、次に足を動かそうとして……。
 矢張り、動かず。

「ちょ、ちょっと、これは
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ