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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第136話 大元帥明王呪
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 強き風が吹き荒び、神籬(ひもろぎ)を取り囲むかがり火の灯りと、活性化した精霊の光に支配された世界。
 何故か風に捕らえられ、宙に浮かぶ人影。両手首と両の足首には拘束を意味する光の環が。
 そして、その黒き影の正面に立つ光輝。

 見えない蜘蛛の糸に絡め取られた美しい……黒蝶。
 いや、むしろ見えない十字架に掲げられた背徳の魔女か。

 そう、それは美しい少女であった。身長は一五〇に届いていないであろう。肌は雪白。長い……膝の裏側にまで届こうかと言う長い黒髪は風に流れ、幼さを表現するかのようなその小さな卵形の顔。其処に理想的な配置の目、鼻、口が存在する。
 黒のコートで包まれた肢体は、はっきりとした事は言えないが、それでも彼女が周囲に発生させている強い炎のような気配が、少女が将来はとんでもないレベルの美女となる可能性を示唆していた。

 しかし――

 囁かれ続ける呪。それは抑揚に乏しく、強い風の音にかき消されながらも途切れ途切れに続く。何時もの彼女からすれば、考えられないくらいに小さく、そして呪いに満ちた言葉。
 焦点の定まらない空虚な眼差し。普段の強く何かを語りかけて来るような瞳とは正反対の、俗に言う死んだ魚のような瞳、もしくは濁ったガラス玉。

 真面な思考が存在しているとは思えない彼女……相馬さつきの様子。ただ、脳は正常に活動していると推測する事は出来る。
 何故ならば、そうでなければあれほどの体術や、術の行使は出来ないから。
 しかし、それならば今現在の彼女が正常な判断や思考を有しているか、と問われれば否、と答えられる状態。

 今の彼女は精神を支配され、正常な判断が出来ない状態に置かれている、……そう考えるべきであろう。

 対して、正面に立つ光輝……俺の方は――
 既に臨界に達し、俺から漏れ出した龍気が周囲の精霊たちを活性化。周囲で歌い、舞う小さき精霊たちが、まるで夜空を覆う流星群の如き様相を作り出す。
 最後の一歩を踏み込む俺。普段は三十センチ以上の差がある視線の高さがゼロと成って居る現在。しかし、決して交わる事のない視線。
 遙か彼方……。現実の世界ではなく、彼方の世界。虚無のみを瞳に映すさつきと、
 その彼女の姿を蒼と紅――ふたつの瞳にしっかりと映す俺。

 さつきの周囲に舞う風、そして小さき精霊たちが俺の龍気を受け、更に活性化。彼女自身に纏わり付いた薄いベールの如き闇……呪いを融かして行く。
 そう、俺の龍気が強まれば強まるほど、さつきから発せられていたどす黒い呪詛が少しずつ弱まって行くのだ。

 行ける。今は俺の龍気の方が強い!

「国も力も栄えも世々に父のものなればなり!」

 最後の祈りの詞と共に、さつきの左わき腹に掌底を叩き込む俺。但し、現実の彼女には一切触れ
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