第35話
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あかん! 落馬してでも全軍を停止させたんや、気が付いてると見るべきやで!」
既に囲地の崖には、張遼軍による大量の弓兵が控えている。
孫策達が囲地の奥――否、中央まで進軍していれば壊滅的な被害を受けていただろう。
しかしそれも、孫策軍が入り口付近で停止した事により事態は一変した。
孫策の勘が常人の遥か上である事は報告に受けている。だからこそ伏兵を悟られぬよう弓兵達は出口側、本陣に近いほうに配置したのだ。
本来なら入り口を封鎖したのち、弓兵達を広げ一斉掃射を浴びせる算段だった。
そして満身創痍になりながら混乱する敵軍に向かって、本陣の騎馬隊が止めを刺すはずだったのだ。
「―――入り口封鎖や、合図を!」
「ハッ」
予定は大きく狂ったが張遼はすぐさま行動に出た。敵軍は少なからず入り口に入っている。
先頭に居る者の風貌は伝え聞いた孫策本人だろう。一緒に居る妙齢の女性からもただならない気配を感じる。恐らく名のある武人だ。
ならば話は早い、入り口を封鎖し孤立させ討ち取れば良いのだ。
支柱を失った軍ほど脆いものは無い、士気の落ちた残党兵など張遼軍にとって恰好の餌食だろう。
張遼は後方に控える騎馬隊に知らせを送る。
『入り口封鎖と共に突撃せよ』
しかし彼女の予想を裏切り、入り口の仕掛けが作動する事は無かった。
兵により合図の旗が振られ続ける。
入り口を封鎖するはずだった兵士達は――既に事切れていた。
賈駆と張遼による、囲地を用いた撃退策。
これが失敗に終わった要因は実に些細なものだった。
始まりは周瑜を心配した黄蓋からだ、言伝を頼まれた彼女は孫策にそれを伝え、敵陣が近いと見るやそのまま先頭に加わった。
そして理性と勘を取り戻した孫策が強引に進軍を停め、黄蓋が長年培った経験から囲地を看破した。
黄蓋は退却を口にすると同時に弓を手に取る、その動きは反射的なものだ。
彼女ほどの武将は当然『囲地』を知っている、その効果と有能性も。
だが幸いな事に自軍は入り口付近で停止出来た。最悪の展開は免れたはずだ。
――否、まだ恐れる展開がある!
本能に基づき目線を入り口の崖に向ける。そして見つけた、落ちれば確実に入り口が封鎖される巨石を。
そして発見と同時に複数の兵士が姿を現す、約十数人。
彼等が巨石に近づく前に、黄蓋の弓から矢が放たれた。
もし、黄蓋が周瑜に声を掛けなければ。
もし、周瑜が黄蓋に言伝を頼まなければ。
もし、孫策の興奮が醒めていなければ。
もし、黄蓋が先頭にいなければ――
賈駆の策は成っただろう。総大将孫策は討ち死に、他の将兵達も壊滅的な被害を受け、撤退を余儀なく
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