第35話
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ッ、考えておきます」
「十分じゃ、ではな!」
周瑜の表情が和らいだのを確認し馬を急がせる。孫策には及ばないが周瑜の勘も鋭い。
直ぐに伝えねば――
「『気をつけるように』?」
「うむ」
「……」
それまでは獲物を前にした獣の如く興奮していたが。黄蓋と、その口から聞かされた周瑜の伝言で、孫策の目に理性が戻る。
――何かある?
そして類稀な勘の鋭さで何かを察知する。それは周瑜が感じていたものと同じ違和感。
周瑜とは違い理屈は伴っていないが、この先に何かあると強く感じた。
「あの冥琳が儂を遣わすほどじゃ、警戒しても損は無いと思うがの」
「ええ、でも敵本陣は目と鼻の先よ。迎撃の態勢を整えられたらまずいし、この速度を維持するべきだわ」
「それについては同感じゃ」
物見の報告から敵本陣は確認している。相手が何かを仕掛ける前に突撃してしまえば問題ない。
攻撃こそ最大の防御、孫策軍はそれを立証できる精強さを誇るのだ。
それから数里移動し、ある場所に行き着いた。
「ほう、敵本陣に到着する前にこのような広い所が――「全軍停止!」な、策殿!?」
「祭、今すぐ皆を停止させて!」
「正気か策殿、この速度でいきなり止めては――「早く!」ッ〜〜全軍停止!!」
孫策の必死な言葉を受け、黄蓋は疾走する自軍に停止を呼びかけた。
その結果彼女の懸念した通り、兵達は前後でぶつかり合い多くの者達が落馬。
大小の差はあれ怪我人が続出した。
「く……策殿、いったいどうしたのだ!」
「わからないわ、でも……この地形に危機感を感じるの」
「この地形? ただ少し開けた――」
そこで黄蓋の言葉が詰まる。馬を走らせていた時には気にならなかった地形。
出入り口が先細りになっているこれには見覚えがある。
「ッ、皆の者退け! これは――これは囲地じゃ!!」
黄蓋は反射的に弓を手に取った。
孫氏曰く『囲地』とは。
入り口が険路で中は断崖に囲まれ、出口が先細りしている。
敵を討つのに絶好の地形である。
攻める側は断崖の高所より矢を撃ち込み、機を見て駆け下り敵を討てる。
受ける側は逃げ道を断崖と自軍の兵に阻まれ、唯一の出口には兵が殺到し先頭から行き詰る。
後ろも容易に敵に割って入られ道を塞がれる。
つまり『囲地』にうまく敵を誘い込めれば――
倍の数の敵でも容易に討てるのである。
「敵軍、入り口で停止しました!」
「な、もう囲地に気がついたんかいな!?」
「いくら何でもこんなに早く気が付かれるはずが……張遼様、一旦様子を窺いましょう」
「
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ