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恋姫†袁紹♂伝
第35話
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ッ、考えておきます」

「十分じゃ、ではな!」

 周瑜の表情が和らいだのを確認し馬を急がせる。孫策には及ばないが周瑜の勘も鋭い。
 直ぐに伝えねば――




「『気をつけるように』?」

「うむ」

「……」

 それまでは獲物を前にした獣の如く興奮していたが。黄蓋と、その口から聞かされた周瑜の伝言で、孫策の目に理性が戻る。

 ――何かある?

 そして類稀な勘の鋭さで何かを察知する。それは周瑜が感じていたものと同じ違和感。
 周瑜とは違い理屈は伴っていないが、この先に何かあると強く感じた。

「あの冥琳が儂を遣わすほどじゃ、警戒しても損は無いと思うがの」

「ええ、でも敵本陣は目と鼻の先よ。迎撃の態勢を整えられたらまずいし、この速度を維持するべきだわ」

「それについては同感じゃ」

 物見の報告から敵本陣は確認している。相手が何かを仕掛ける前に突撃してしまえば問題ない。
 攻撃こそ最大の防御、孫策軍はそれを立証できる精強さを誇るのだ。



 それから数里移動し、ある場所に行き着いた。

「ほう、敵本陣に到着する前にこのような広い所が――「全軍停止!」な、策殿!?」

「祭、今すぐ皆を停止させて!」

「正気か策殿、この速度でいきなり止めては――「早く!」ッ〜〜全軍停止!!」

 孫策の必死な言葉を受け、黄蓋は疾走する自軍に停止を呼びかけた。
 その結果彼女の懸念した通り、兵達は前後でぶつかり合い多くの者達が落馬。
 大小の差はあれ怪我人が続出した。

「く……策殿、いったいどうしたのだ!」

「わからないわ、でも……この地形に危機感を感じるの」

「この地形? ただ少し開けた――」

 そこで黄蓋の言葉が詰まる。馬を走らせていた時には気にならなかった地形。
 出入り口が先細りになっているこれには見覚えがある。

「ッ、皆の者退け! これは――これは囲地じゃ!!」

 黄蓋は反射的に弓を手に取った。








 孫氏曰く『囲地』とは。
 入り口が険路で中は断崖に囲まれ、出口が先細りしている。
 敵を討つのに絶好の地形である。

 攻める側は断崖の高所より矢を撃ち込み、機を見て駆け下り敵を討てる。
 受ける側は逃げ道を断崖と自軍の兵に阻まれ、唯一の出口には兵が殺到し先頭から行き詰る。
 後ろも容易に敵に割って入られ道を塞がれる。
 つまり『囲地』にうまく敵を誘い込めれば――

 倍の数の敵でも容易に討てるのである。

「敵軍、入り口で停止しました!」

「な、もう囲地に気がついたんかいな!?」

「いくら何でもこんなに早く気が付かれるはずが……張遼様、一旦様子を窺いましょう」


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