第35話
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「物見より報告! 前方に敵本陣と思しき場所有り、迎撃の姿勢を見せております!!」
「ふふふ。初日に感じた鬱憤――大いに晴らさせてもらうわ!」
張遼軍の本陣を見つけた孫策達は疾走した。
険しく行軍には適さないその場所を、何事も無いように馬を走らせていく。
孫策軍が少数精鋭だからこそ成せる業だ。
「……」
自軍が血気盛んに進軍していく中、軍列の中央付近に居た周瑜は違和感を感じていた。
――うまく事が運びすぎている
迂回路全体に伏兵を散らばしている張遼軍。本陣の戦力は多くない、精々自分達と同程度の筈。
伏兵策の為に精鋭を使っていれば、質で自軍が圧倒できる。
――にも関わらず、迎撃
妨害が無い事も気がかりだ。此処までの道程で、幾つも伏兵を配置できる場所を素通り出来た。
敵の策で最も重要なのは本陣の指揮系統。それが無くなれば伏兵は孤立し、全てが水の泡になる。
敵方には本陣を移動させるという手段もあった。伏兵や罠で孫策軍の動きを止め、把握している地形の中で付かず離れず敵を監視すれば良いのだ。
しかし、疑問に思うと同時に答えも湧いてくる。
本陣の守りを意識して伏兵を配置すれば、そこから本陣の場所を予測されるかもしれない。
あえて配置せず手薄にする事で、本陣の場所を分からないようにした。
此方の接近に気がついて迎撃の動きを見せるのは、地形的に退却が難しいから。
そう考えると辻褄が合う。
――だがこの感じ、あの時に似ている
誰かの掌の上に居る感覚、あの袁紹等から感じたものだ!
「どうしたのだ冥琳。敵本陣を見つけた自軍の軍師が青い顔すれば、皆の士気に関わるぞ?」
「祭殿……」
思い詰めた表情の周瑜に黄蓋が声を掛ける。彼女の言葉で意識を現実に戻した周瑜は、最悪の事態に備えるため口を開いた。
「祭殿、前方に居る雪蓮に言伝をお願いします」
「む、それは儂でないといけないのか?」
現在軍列の中央に居る。黄蓋は周瑜に声を掛けるために後続から出て来たのだ。
言伝の相手である孫策は軍の先陣を指揮している。中列からそこまで行くのは骨を折るし、何より伝令係の者達が居る。
「雪蓮は興奮で頭に血が上っているはず。兵の言葉には耳を貸さない恐れがあります」
「それで儂か……相分かった。言伝を引き受けよう」
「忝い。彼女には一言『気をつけるように』とお願いします」
「承知した。では膳を急ぐとするか」
感謝の意を伝えるため頭を下げる、それを見て黄蓋は苦笑いを浮かべた。
「相変わらず固い奴じゃ。そうさなぁ、儂から取り上げた酒で手を打とう」
「フ
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