第35話
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「それを実践できる張遼将軍の能力は高いですぅ」
初日の攻防戦。孫策軍の三軍師が伏兵や罠の場所を予測、優秀な斥候を使い特定。
回避、或いは返り討ちにすることで進軍しようと目論んだ。
それに対し張遼は――孫策軍の動きに合わせ伏兵の位置を変えることで霍乱。
結果、幾度となく孫策軍に奇襲を仕掛け損害を与えた。
「解った事が一つあるな」
「あら、それも太平妖術の書のおかげかしら?」
「むくれるな雪蓮。それを置いてきた事はお前も知っているだろう?」
「フンッ!」
そっぽを向く孫策に周瑜は苦笑する。
太平妖術の書に頼り、それに友が魅入られること警戒していた孫策。
長い付き合いからそれを察した周瑜は、彼女の憂いを解消すべく置いて来たのだ。
この迂回路発見は紛れもなく孫策軍の力によるものである。
孫策が拗ねているのは戦況に満足できないからだろう。基本的に正面からの戦いを好む彼女にとって、一進一退の攻防は退屈で仕方なかった。
「話しを戻そう。解ったことは敵の本陣が近くにあるということだ」
張遼軍は孫策達の動きに応じて伏兵の位置を操作している。見通しの悪いこの地形で成すのは至難の業だ。
「奴は我等を監視している」
隠密に長ける偵察兵を使い此方の動きを察知している。注目すべきは情報伝達の精度だ。
本陣が離れていればいるほど伝達するのは難しい。狼煙や銅鑼の音響を使ったものが効果的だが、その二つはおろか合図を送った痕跡が見られない。
そこから導き出される答えは、長距離で情報伝達する必要が無いという事。
「問題は何処に本陣があるかだが……」
「あっ」
「どうした隠、気が付いた事があれば遠慮なく言ってくれ」
「伏兵の動き……左右で偏りを感じませんか?」
『!?』
地形図で初日の戦況を振り返っていた陸遜。彼女の言葉に周瑜と呂蒙も、地形図上に配置されている兵馬駒に視線を移す。
自分達から見て右側に位置する伏兵が、もっとも効果的なタイミングで奇襲している。
それに対して左側の動きが僅かに遅い。特定した場所からの移動はできているが、奇襲を仕掛ける最適のタイミングを失っていた。
「張遼は我等の動きを見透かすように伏兵を動かす」
「必要とされるのは、優秀な偵察兵の目と正確かつ機密性のある情報伝達」
「その二つを両立させるのは至難の業ですね〜。
精度が高ければ高いほど本陣も近くにあるでしょう」
「その条件の下。右にいる伏兵の動きが正確なのに対し、左に生じる僅かな遅れ。
これは……情報伝達の速度を意味する」
そこから導き出される答えは一つ。
『敵本陣は右にある!』
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