第35話
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連合と董卓軍の衝突から、早くも初日が過ぎようとしていた。
「……」
謁見の間にて相国である董卓、そして軍師の賈駆が陣営の文官達と共に沈黙を保ち報告を待っている。
絶望的な状況にあって、初日の戦況は今後の勝敗を大きく左右する重要な要素だ。
「ほ、報告! 水関の防衛に成功、初日は我等の勝利に御座います!!」
『オオッ!』
「詠ちゃん!」
「詳細を教えて」
安堵の空気が流れる中、賈駆は報告を急かす。
戦はまだ始まったばかりなのだ。前線で奮闘する将兵達のためにも、時間を無駄には出来ない。
「連合の先鋒は劉備軍。その将である関羽が華雄様に一騎打ちを申し込んだものの、華雄様はこれを無視して出陣。関羽を孤立させ敵軍を誘き出し、相手に大きな被害を与えました!」
『オオッ!』
「さすが華雄様だ」
「しかし劉備軍が先鋒とは、寡兵を当てるなど舐めたマネを……」
「いや、これは好機でもある。相手が余裕を見せている内は防衛しやすい」
「その通りだ、生半可な攻めでは華雄様を退けまい」
「なんで華雄さん出陣したのかな?」
「ボクの指示よ」
「詠ちゃんの?」
「華雄は圧倒的に攻めの将だもの、あいつの持ち味は攻勢に出ることで発揮されるわ。
だから此処を発つ前に伝えたの、『機があれば出陣しなさい』って。正直、ここまでうまくいくとは思っていなかったわ」
「普段はケンカばかりしてるけど、やっぱり詠ちゃんは華雄さんの事も良く見てるんだね」
「な、ぼ、ボクは軍師としての責務を全うしているだけよ!」
董卓の言う通り、華雄と賈駆の二人は普段から口論が絶えない。
攻め主体の華雄、慎重に事を進める賈駆は何かと意見が衝突しがちだ。
しかし、喧嘩するほど仲が良いという言葉があるように、この二人も互いを認め合っていた。
「そんなことより報告の続きよ!」
「ハッ、劉備軍とそれを援護に来た趙雲に痛手を与えた後、華雄様は水関に撤退。
下がった劉備軍に変わり、他の軍勢が水関を攻め立てましたが被害は軽微。
日没と共に連合は退却いたしました!」
「上出来ね。……張遼の方は?」
「賈駆様の予想通り、迂回路に敵が現れその軍と交戦。
軍旗は無いものの兵の特徴から、孫策軍と思われます」
「霞さん……」
「大丈夫よ月、霞にはボクから必勝の策を授けてあるわ」
開戦から二日目の朝。迂回路を攻略する孫策軍は思うように進軍出来ず、未だ入り口付近に待機していた。
「どうにもやりにくい相手ですね〜、張遼将軍は」
「いや、張遼ではない。この策は別の者の臭いを感じる、恐らく賈駆だろう」
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