暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十七話 要塞攻防戦(その2)
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
が終わりましたら、撤退されるのがよろしいかと思います」
「無礼な!我が軍は未だ戦える。侮るか」
「そうだ、戦える」
いきり立つ参謀達を抑え参謀長が問いかけた。

「ヴァレンシュタイン准将、それが三つ目の要件ですか?」
「いいえ、これは小官個人の意見です」
「ならば、それについては無視してもよろしいですな」
「第六次イゼルローン要塞攻略戦は失敗しました」
「!」

「先程の攻撃失敗により同盟軍にはイゼルローン要塞攻略の手段が無くなりました。これ以上戦闘を継続しても損害が多くなるだけです。であれば撤退するのが上策ではありませんか」
「馬鹿な、敵に言われて撤退など出来るか」
「そうだ、我々にも面子がある」

「あなた方の面子でどれだけの犠牲者を出せば気が済むのです。五十万、それとも百万ですか?」
「それは……」
「兵が可哀想とは思いませんか。彼らには家族がいるのですよ、彼らを待っている家族が」

「ヴァレンシュタイン准将、貴官の意見はわかりました。しかしこの場で我々の回答を出す事は出来ません。参考にさせていただきます」
苦しげな参謀長の言葉にヴァレンシュタイン准将はうなづいた。変わった男だ、こちらを挑発するのではなく本気で撤退を勧めていた。どういう男だ? 

「ワルター・フォン・シェーンコップ、参上しました」
ローゼンリッターのシェーンコップ大佐がやってきた。洗練された容姿を持つ三十前後の男だ。恭しい口調と不敵な表情のアンバランスさが奇妙にあっている。

「貴様、リューネブルク!」
「久しいな、シェーンコップ大佐、俺の事はリューネブルク少将と呼べ」
「何を言うか、この裏切り者が」
「使者に対して無礼だぞ」

その言葉でリューネブルクと呼ばれた男の正体がわかった。第十一代ローゼンリッター連隊長へルマン・フォン・リューネブルクだ。周囲もざわめいている。しかしなぜ此処に来た?
「シェーンコップ大佐。小官はヴァレンシュタイン准将です」
「ヴァレリー!貴様らヴァレリーを」
「落ち着いてワルター」

いきなり修羅場になった。付き添いの女性士官はヴァレリーと呼ばれている。知り合いか?いや彼女も亡命者か?よくわからない。
「シェーンコップ大佐。話を聞いて欲しいのです」
「……」
返事が無いのを了承と取ったのだろう。ヴァレンシュタイン准将が話し始める。

「我々は戦争をしています。当然ですが其処には憎しみや恨みが生まれる事もある。しかしその憎しみや恨みに囚われないで欲しいのです。忘れろと言っているのでは有りません。囚われないで欲しいのです。憎しみや恨みで戦争を始めれば、それはもう戦争ではありません。ただの殺し合いです。違いますか」
「……」

「貴官が今回したことは戦争に勝つ事ではなく、ただリュー
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ