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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十七話 要塞攻防戦(その2)
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、一人は三十半ばの長身の男性士官だった。いかにも帝国貴族らしい容姿を持った男と言っていい。今一人は帝国軍では珍しい女性士官だった。長身で赤みを帯びた褐色の髪を持つ美人だ。そして最後の一人は黒髪黒目、華奢で小柄な少年だった。

具合が悪いのか顔色が悪い。体もふらついて、長身の女性士官が気遣うように寄り添っている。副官か?それとも通訳か?そんな事を考えていると、少年は挨拶のために出て来たグリーンヒル参謀長に敬礼をしつつ流暢な同盟語で話しかけてきた。

「帝国軍宇宙艦隊司令部作戦参謀エーリッヒ・ヴァレンシュタイン准将です」
瞬時にして、室内の空気が張り詰める。彼がヴァレンシュタインか、帝国が誇る若き用兵家。アルレスハイム星域の会戦、ヴァンフリート星域の会戦、ヴァンフリート4=2の戦いと我々に煮え湯を飲ませ続けている。先程の要塞攻防戦も彼の采配だろう。室内は好奇と憎悪の視線に溢れた。

「ドワイト・グリーンヒル中将です。ようこそ」
参謀長は答礼しつつ、言葉を続けた。
「ヴァレンシュタイン准将、具合が悪そうですが?」
「今朝から熱がありまして、申し訳ありませんが椅子を用意していただけないでしょうか」
「気がつきませんでした。誰か椅子を」
参謀長の言葉に椅子が用意される。ヴァレンシュタイン准将は付き添いの女性士官に支えられながら椅子に座った。長身の男性士官は護衛役なのだろう、准将の背後に立つ。

「准将、ここへは何用でいらっしゃったのですかな」
「三つ有ります。一つはローゼンリッターのシェーンコップ大佐に話したい事があります。お呼びください」
「シェーンコップ大佐ですか」

「御心配には及びません。この場で、皆さんの前で話します。謀略を仕掛けるような事はありません」
不思議な事に付き添いの女性士官と護衛役の男性士官の顔に動揺が走る、なんだ?
グリーンヒル中将は、すぐシェーンコップ大佐を呼ぶように言った。そして二番目の用件を待つ。

「二つ目は停戦を提案します。停戦時間は十二時間、停戦を受けていただければ、十二時間の間に今回の攻撃の敗残兵、負傷兵を同盟側にお返しいたします」
「!」
ありえない話だった。帝国は同盟を反乱軍としている。反乱者を返す?何を考えている?

「いかがでしょう」
グリーンヒル参謀長はロボス総司令官と視線を交わす。ロボス司令官は軽くうなずいた。
「わかりました。停戦を受けましょう」

室内に安堵の空気が広がる。こちらが、今一番悩んでいた事が負傷兵の存在だった。
撤退論を唱える人間に対し、継戦論を唱える人間が拠り所としたのが負傷兵の存在だったのだ。なるほど、こちらを撤兵させるためか。上手い手だ。その場で帝国側に停戦の受け入れが伝えられた。司令部内の空気が緩む。

「敗残兵、負傷兵の受け取り
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