第二百四十四話 屋島の合戦その一
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第二百四十四話 屋島の合戦
魔界衆の軍勢は信長が率いる三十万以上の大軍、もっと言えば信長を追っていた。闇夜の中をひたすら進み。
老人は十二家、実質的にはもう松永家はいないので十一家の棟梁達と共に丘に上がった。だが水軍は相変わらず海にある。
棟梁達はそれぞれ馬に乗らず輿や徒歩だ。だが本陣では堂々として言っていた。
「馬なぞな」
「我等にはそぐわぬわ」
「あれは武士の芸」
「闇の我等に馬なぞ不要」
「兵達もだ」
「乗ってはおらぬわ」
「馬なぞなくても戦えるわ」
こう言ってなのだ、そのうえで。
彼等は馬に乗らずだ、そうしてだ。
水軍と足軽だけ率いていた、それは老人もおかしいとは言わなかった。
それでだ、老人は周りにいる魔界衆十二家の棟梁達に言った。
「鉄砲と弓矢はあるな」
「はい、どちらも」
「槍もあります」
「傀儡も式神もです」
「どちらもすぐに出せます」
「ならよい、では夜明け前にだ」
その時にというのだ。
「仕掛けるぞ」
「畏まりました」
「では夜明け前にです」
「織田の軍勢を攻めましょう」
「そして織田信長を」
「その首を取る」
まさにというのだ。
「よいな」
「わかっております」
「それではです」
「その時に傀儡も式神もこれでもかと出し」
「そして勝ちましょう」
「是非共」
「そしていざとなれば」
老人はさらに言った。
「わかるな」
「はい、我等の術も使いましょう」
「それもまた」
「妖術を織田の軍勢に浴びせ」
「そのうえで散々に打ち破ってあげましょう」
「わしも使う」
強い声でだ、老人はまた言った。
「左道の術をな」
「一ノ谷では使えませんでしたが」
「それでもですな」
「その妖術を使って」
「そしてですな」
「勝つ」
必ずとだ、こう言ってなのだった。
老人は兵をさらに進ませた、その中でだった。
老人は周りの者達にだ、さらに問うた。
「それで戦は何処になる」
「屋島です」
「あの地になります」
「そうか、屋島か」
その地で戦になると聞いてだ、老人はその目を鋭くさせてこう言った。
「あの地はな」
「はい、源義経がです」
「平家の軍勢を破っています」
「馬で山を越えて」
「そのうえで」
「そうじゃな。織田信長もしてくると思うか」
義経が行ったその鵯越をというのだ。
「あれを」
「ですな、備えておきますか」
「鵯越のことも」
「では、ですな」
「そちらにもですな」
「策を使いますか」
「ではそれがしが」
百地が出て来てだ、老人に言って来た。
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