巻ノ三十 昌幸の智略その十一
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「物陰から手裏剣やそれぞれの得物で攻めてじゃ」
「そしてすぐに去る」
「そうされますか」
「夜に陣地を攻める場合もな」
その時もと言うのだった。
「一撃で下がるのじゃ、よいな」
「深く戦わずに」
「蜂が刺す様にしてですか」
「また去る」
「そうしますか」
「そうせよ、兵が多ければそうして人をあまり攻めずにじゃ」
一撃で終わらせてというのだ。
「心をちくりちくりとじゃ」
「攻めて疲れさす」
「そうしますか」
「やはり心ですか」
「心を攻めますか」
「そうじゃ、敵の数を減らすよりもな」
むしろと言うのだった。
「心を攻めよ、よいな」
「畏まりました」
「ではここはです」
「一撃一撃で帰る」
「それを繰り返しますか」
「そうしていこうぞ。そして敵は間違いなく上田の城まで来るが」
幸村は戦のこれからの流れについても話した。
「鳥居殿は攻め落とそうとはされぬ」
「何と、城を攻めてもですか」
「そうしても」
「城攻めは兵を多く失う」
このことをだ、幸村は家臣達に指摘してみせた。
「それは誰もが避けたいからな」
「それに上田の城は堅固」
「七千の兵では攻め落とせませぬか」
「だからですか」
「鳥居殿は攻めては来られませんか」
「そうじゃ、囲み城下の盟を誓わせてくる」
完全に読んでいた、鳥居のその考えを。そのうえでの言葉だった。
「だからな」
「それでは、ですな」
「それで攻め方がある」
「そういうことですか」
「敵の考えがわかっていれば楽じゃ」
幸村はその目を鋭くさせてだ、強い輝きを放っていた。山の中で十人の家臣達に話しながら腕を組み目をそうさせていた。
「攻め落とすつもりがないならな」
「攻めるにしてもですな」
「徹底的にはしてこない」
「そういうことですか」
「その通りじゃ、しかし我等は違う」
真田の方はというと。
「ここで守り抜くだけでなくな」
「返り討ちにもしますか」
「徹底的に」
「そうしますか」
「そうする」
絶対にという言葉だった。
「そして二度と上田に攻めようと思わぬ様にする」
「ですか、では」
「敵をこうして散々悩ませ疲れさせたうえで」
「そのうえで、ですな」
「上田の城まで来てもらい」
「そうしてですか」
「徹底的に叩く」
まさにだ、そうするというのだ。
「ではよいな」
「城まで軍勢を向かわせながら」
「我等は絶え間なく攻めていく」
「そうしますか」
「うむ、そして城に戻りな」
そしてというのだった。
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