巻ノ三十 昌幸の智略その九
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「是非です」
「そうか、ではあの者達にも直接言おう」
「そうして頂けると何よりです」
「しかし褒美はか」
「欲のない者達です」
十人共というのだ。
「禄も銭も宝も」
「ふむ、そうか」
「それがしもですが」
「似た者同士であるな」
「そうなりますか」
「うむ、だからこそ出会い共にいるか」
「主従でありますが」
それと共にというのだ。
「義兄弟であり友です」
「深い絆があるな」
「何よりも」
「ではな、御主達はな」
「これからも共にいます」
「この戦いもじゃな」
「そうです、戦います」
こう話してだ、二人で徳川の陣地に火を点けてその場を後にした。徳川の本陣は彼等のことを聞いて大騒ぎになっていた。
「何と、そこまで強い者達がか」
「真田にはおるのか」
「しかも陣地を奪われたと」
「その一つを」
「この本陣が襲われたという話もあるのか」
「どうなっておるのじゃ」
「ふむ、どうやらな」
鳥居は腕を組みだ、こう言った。
「真田家には相当に強い忍達がおるな」
「では、ですな」
「その忍達がですな」
「あちこちで攻めて来てですか」
「我等を乱している」
「左様ですか」
「うむ、伊賀者か甲賀者を連れて来るべきだった」
鳥居はその顔をやや苦くさせて言った。
「ここはな」
「伊賀十二神将のうち誰かを」
「それは甲賀のですな」
「そうするべきじゃったか」
「しかしです」
ここでだ、旗本の一人が鳥居に言った。
「今は服部殿も十二神将の方々も」
「皆じゃな」
「はい、上方に行っているかついていまして」
それでというのだ。
「どなたも」
「そうじゃ、だからな」
「忍の者はですな」
「最初から連れて来ておらぬ」
その中で確かな腕の者達はというのだ。
「それが仇となったか」
「ですか」
「しかしじゃ、兵はこちらの方が上でじゃ」
鳥居はあらためて言った。
「このまま進む、しかしな」
「問題は兵糧と武具ですな」
「この二つは何としても守りましょう」
旗本達は鳥居にすぐにこのことを言った。
「この二つがやられてはです」
「今の状況なぞ比べものになりません」
「戦どころではなくなります」
「餓えることすらありますぞ」
「その通りじゃ、飯と武具にはじゃ」
軍勢の後ろにあるそういったものはとだ、鳥居も述べる。
「護りの兵を増やせ」
「ですな、ここは」
「そうしましょうぞ」
「そして兵を小さく分けて進ませるのを止めよ」
こうも言うのだった。
「そこで真田の兵達にやられておる様じゃしな」
「では多くまとまってですか」
「そのうえで進みますか」
「そうせよ、無論物見や斥候は出すが」
しかしというのだ。
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