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真田十勇士
巻ノ三十 昌幸の智略その八
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「無事に退散させた」
「とりあえずはよしとしよう」
「しかしな」
「まだ徳川家の軍勢は来ている」
「そうじゃ、ではまた行こうぞ」
 清海も応えてだ、そしてだった。
 三人は別の場所に向かった、そこでまた徳川の兵達を倒すのだった。
 信之もだった、自ら軽い旅の武士の姿になり自身と同じ姿になっている幸村と共に徳川の兵達を忍としても倒していた。
 夜に徳川家の陣地の一つに急襲を仕掛け包絡を投げてだった。
 幸村と共に切り込み驚いて起き上がった兵達を切り捨てつつだ、こう叫んだ。
「敵だ!」
「敵が来たぞ!」
「真田の軍勢が来たぞ!」
「急に来たぞ!」
 こう叫んでだ、敵を惑わしてだった。
 二人で敵兵をさらに切りつつだ、こうも叫んだ。
「退け!」
「鳥居様も襲われたそうだぞ!」
「早く殿をお守りせよ!」
「御大将が討たれては末代までの恥ぞ!」
「何っ、鳥居様もか」
「それは大変じゃ」
 急な攻めに慌てふためく兵達はこの言葉に惑わされた、それでだった。
 慌ててその場から逃げ去った、それでだった。
 信之は誰もいなくなった陣地の中でだ、共に戦う幸村に言った。
「これでな」
「はい、この陣地を奪うことが出来ましたな」
「こうした小さな陣地はな」
「こうして急に攻めて」
「うむ、追い出すに限る」
「そうです、一つずつです」
 まさにとだ、幸村も言う。
「追い出し奪っていきましょう」
「そうじゃな、しかしな」
「それでもですね」
「うむ、それでもじゃ」
 信之はこうも言った。
「敵はまだまだ多い、どうしてもな」
「兵を率いての戦も」
「避けられぬ」
「はい、どうしても」
 こう言ったのだった。
「ですから今はです」
「ただ敵を乱しておるだけじゃな」
「その乱すことも大事ですが」
「やはり兵同士の戦は避けられぬ」
「そうなるな、それでじゃが」
 ここでだ、信之は幸村にこうも言ったのだった。
「御主の家臣達じゃが」
「あの十人ですか」
「それぞれ相当な働きをしておるそうじゃな」
「あの者達はまさに一騎当千です」
 幸村は確かな声で兄に答えた。
「まさに千人の敵を相手に出来る」
「そこまでの者達じゃな」
「左様です」
 幸村は兄に確かな声で答えた。
「あの者達ならあれ位のことはしてくれます」
「わかっておるのじゃな」
「寝食を共にしておりますので」
「そして修行もじゃな」
「互いに肝胆相照らす」
「そこまでの絆があるか」
「ですから」
 それだけ常にいるからというのだ。
「あれ位のことはしてくれます」
「そうか、あの十人だけで徳川の軍勢を相当に悩ませておる」
 信之は幸村に確かな声でだ、こうも述べた。
「それが大きい」
「そのお言葉あの者達も喜
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