2部分:第二章
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第二章
「ヒトラーだってそうよ」
「えっ、ヒトラーって」
「知らなかったの?ヒトラーって菜食主義者だったのよ」
このことをだ。彼女に告げたのである。
「肉も魚も食べない、料理にラードさえ使わない本物の菜食主義者だったのよ」
「やってること見てたらとても」
「しかも酒も煙草もやらないし女性にも清潔で金銭欲もない、着てる服も調度品も質素な、そうした人だったのよ」
これは本当のことだ。彼はその生活はさながら修道僧の様だったのである。趣味は読書に音楽鑑賞、とりわけワーグナーを好んだ、そうした人物だったのである。
「けれどね。ヒトラーはね」
「じゃあ菜食主義者でも。そんなお坊さんみたいな生活をしていても」
「偉大になっても。壮絶な意味で偉大になるかもね」
「ううん、だったら」
それを聞いてだった。彼女は。
落ち着いた顔になった。話を受けてそれでだ。頭を冷やしてしまったのである。
そのうえで彼女が述べた言葉だ。
「じゃあ。菜食主義は止めるわ」
「お肉やお魚も食べるのね」
「ええ、お菓子も果物もね」
何気にそうしたものも話に入れる。菜食主義でもそうしたものは食べるつもりだったのだ。甘いものは最初から除外していたのである。
「程々にね。食べるわ」
「それがいいわね」
結局彼女はヒトラーの話を聞いてそれで考えなおしたのであった。しかしである。
実はヒトラーはだ。
今も隠れファンが多いと言われている。少なくとも一度はドイツを救ったと言えるだろうか。そうした意味では英雄であろうか。だがそれについてはここでは評価を避けることにする。
少なくともである。彼女が極端な、しかもいささか自分にとって都合がよく尚且つ誇大妄想まで入っている菜食主義に入ることは止められたのである。そのことだけは確かである。それがヒトラーの功績になるのかどうかまでははっきりとは言いかねるがだ。
菜食主義は偉大か 完
2011・3・23
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