一章
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静けさに満ちた店内。そこに取り残されたような一人の子供と男性
「犯罪者……悪者……?」
「しかも最大級のな」
少年は呆然としていた
驚いていたわけではない。ただ呆然としていたのだ
「それでも手伝えっていうか?その指命とかいうのを」
少年は口をつむる。視線は下におち、誰の目から見ても迷いが見てとれた
そして意を決したように男の前にどすんと座った
「うん。かわんない」
少年はそう言った
この人は悪いやつで、みんなから嫌われてて、怖がられてる。ぼくに何かしてくるかもしれない
でも、きっと
きっとこの人は
「ぼくは世界を救いたい」
最悪、じゃない
「だから、きっと人を傷つけることになる」
ゼロは表情を変えることなく、ただじっとぼくの目を見ていた。深い濃紫の色がとても綺麗で、なんだか悲しかった。なんの表情も浮かべない目は、綺麗だけれども冷たすぎる悲しい色だと思った
どうして、こんな目をするのかな……
「ゼロ、ぼくは……雫神のみんなを助けたい。この世界の間違いを正したい。みんな、気づいてないんだよ。この世界の異常さに」
ぼくは話した。この世界の本当の姿を
雫神がどうなっているのかを
「雫神は……本当の雫神はずっと閉じ込められてるんだ」
昔、マーテルを求めて人は旅をしていたころ
雫神はそのマーテルの中に住み、平穏で優しい日々を送っていた
雫神はそもそも人類とは違う生き物である。人よりも長寿で、メンスとアニムスを使いこなし、その力を生きるために使う。誰かを傷つけるという概念がそもそもない。
だからマーテルと話し、外の世界を良いものにするため、またはこの大樹まで来てもらうためにティナを作った。メンスとアニムスを使えない人間たちに与えられた生きるための力、航海のための力。それがティナだった
"いつかここに人間たちが来て、楽しいお話ができるといいね"
雫神たちとマーテルはその未来に心を踊らせていた
しかし現実はちがった
人は雫神ではない
ティナは傷つける力になり、奪い合われるものとなった
マーテルは嘆いた
だから泣く泣く代償を奪った。ティナを求めるものを少なくするために
しかし人は変わらない
ティナをめぐって殺しあい、ティナを使って死んでいった。そしてマーテルにティナを恵むよう祈り続けた
マーテルは生きるための力を得たいという望みを無視できなかった。そう望ませたのは、自らの過ちのためだったからだ
そして
人はマーテルにたどり着いた
雫神の一族も、マーテルも、なにもかもを無視し、人の残虐さを
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