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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八十五話 広域捜査局第六課
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気付かぬものだな」
「何がです?」
「いや、ここまで来るのに誰も私に気付かなかった」
私の言葉にヴァレンシュタインがおかしそうにクスクス笑い出した。釣られて私も笑ってしまった。妙なものだ、銀河帝国高等弁務官府の応接室で私達が向かい合って笑い合うとは……。
「全然違いますよ。髪型もですが人相が違います。昔は眉間に皺が有っていつも不愉快そうにしていました。今の穏やかな表情からは考えられませんね」
「失礼な。……威厳を保とうと必死だったのだ。今考えればかなり無理をしていたのだろうな」
「肩が凝ったのではありませんか?」
「言われてみればそんな記憶が有るようだ」
ヴァレンシュタインがまた笑い出した。今度は声を上げて。本当に失礼な男だ。
「しかし本当に統一したとは……、フェザーンに遷都すると聞いたが」
「御存じでしたか」
「フェザーン人の間では結構話題になっている」
私が答えるとヴァレンシュタインが目を瞠ってそして笑い出した。フェザーン人の耳の速さに感心したらしい。
「来年にはその予定です。フェザーン人達はこの事を如何思っているのでしょう?」
「そうだな。……絶対反対だと言っている人間は少ないな。どちらかと言えば歓迎している人間が多いと思う。帝国が宇宙を統一した、フェザーンがその首都になれば今以上に繁栄すると思っている」
ヴァレンシュタインが納得しかねるといった表情をしている。国が滅ぶのだから反発は大きいと思っているのだろう。
「分からないかな、フェザーン人の気持ちが。……フェザーン人の少なからぬ人間が地球教の事を無かった事にしたいと思っている。皆この国がおぞましい陰謀によって創られたとは思いたくないのだ。自分達が知らぬ間にそれに協力させられていたとはな」
「なるほど、そういう事ですか」
ヴァレンシュタインが頷いた。納得したようだ。
多くのフェザーン人にとって地球教の陰謀は悪夢でしかなかった。その悪夢を振り払うために新たな帝国の首都になる事を受け入れようとしている。帝国が輝けば輝くほど帝都フェザーンも輝く。過去の汚点等誰も思い出さなくなるだろう。フェザーン人はそうなる事を願っている。地球教の悪夢を新帝国の栄光で打ち消したいのだ。
ルビンスキーの死でさえ誰も触れたがらない。ルビンスキーが地球教に繋がっていた事、そして裏切って帝国に付いた事は分かっている。殺したのはおそらくは帝国である事にも気付いている。しかし大声で騒ぐ事で醜い真実が露わになる事を懼れているのだ。誰もルビンスキーの死体が腐臭を撒き散らす事を望んでいない。むしろルビンスキーが永遠に消えた事を心の何処かで歓迎している。
「だとするとフェザーン人は新帝国の建設に協力してくれそうですね」
「そうだな」
「貴方も如何です?」
「私? それは
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