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なみだ
イチ

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ハラリ
と紙をめくる音が店内に響いた。
店の入り口付近にあるレジのカウンターの内側で、(シン)は足を組んで椅子に腰掛けていた。
彼女は色の抜けたような茶色の長髪を頭のてっぺんでお団子にしてあるが、お世辞にも綺麗にまとめてあるとは言えない。
眉毛の上で短めに揃えられた前髪が、開けっ放しの入り口から吹く風にサワサワと揺れている。
そんな事も気にせず、彼女は太腿の上に置かれた本をすごい速さで読み続けていた。




「すごいねぇシンちゃん。
その本、全部読み終わったのかい?」




店に入ってきた年配の男性がカウンター越しに(シン)に話しかけた。
その本、とは彼女の右脇に積み重ねられた数十冊の本なのだが、彼女の瞳は眼鏡越しに文字を見つめるばかりで男性に気づく様子はない。
しかし男性は声を荒げる事もなく、ただハハハ、と頭をガシガシ掻きながら笑うと、店内へと消えていった。

一連のその様子を見ていた1人の女性が、何冊かの本を手にカウンターへ向かった。




「お嬢さん、本を買いたいのだけれど。」




しかし、やはりカウンターに座る(シン)という彼女は動じず、変わらず本を読み続けている。




(これでは店番の意味がないわね。)




これじゃあ盗まれても文句言えないわ、とひとりごちたその女性だったが、視線の先まで本をずいっと差し出すと、(シン)と呼ばれた彼女はハッとしたように顔をあげた。




「ハッ?!すみません、集中していたもので…
お買い上げですか?
この4冊なら1200ベリーになります。」




「計算はお早いのね。」




「え?
まあ、この店、取扱数少ないですし」




はい、1200ベリーちょうどいただきました。
そう言って(シン)はレジの機械の中へと受け取ったお金をしまった。
そんな彼女を見つめながら、4冊の本を購入した女性は頭を回転させる。
計算が早いのね、という言葉に取扱数が少ないから、と返したということは、どの本をいくらで売っているのか全て覚えてしまっているということだろうか。
そこまで考えると女性はフフと微笑み、読書を再開させようとしていた(シン)へもう一度話しかけた。




「私、ロビンと言うのだけれど、よかったら少しお話ししましょう?」




そう言ってロビンはニッコリと笑った。





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