第3章 黄昏のノクターン 2022/12
37話 夕暮れの水面
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も礼が済んでいない。恩知らずにはさせないでくれよ?」
返答を終え、それを聞いたヒヨリは嬉しそうな笑みを浮かべて、そして矢継ぎ早に再び声を弾ませた。
「コルネリオさん。私はね、ヒヨリっていうの! こっちのお姉さんがティルネルさんで、お洋服を貰ったのが燐ちゃんだよ!」
唐突な自己紹介。しかし、出会った当初から現在に至るまで、俺達は確かにコルネリオを初めとしたマフィア一同には名乗ることはなかった。
友人となる相手には自己紹介を。初対面の時にしそびれてタイミングが曖昧になってしまったが、如何なる理由であろうとそれを完遂することこそヒヨリの流儀なのだ。不思議とコルネリオは唖然とすることなく自然体で耳を傾ける。当惑する者がほとんどのヒヨリの勢いに押されないのは、このアインクラッドにおいては貴重な存在に思える。つられて自己紹介に便乗したクーネ達の名前まで聞き、コルネリオは静かに頷いた。
「皆の名は覚えた。今度は菓子でも用意しておくとしよう」
「またね!」
「ああ、また会おう。今日は戻って休むと良い」
最後にヒヨリとコルネリオが挨拶を交わした後、皆が一様に外へと向かって出ていった。終わってしまえば呆気なかったように思えるものの、コルネリオであればアジトへいつでも迎え入れてくれるだろう。今は拠点へと戻ることが先決か。なぜならば夕刻も遅い時間だ。戻って休むには、プレイヤーという立場からすれば狩りや迷宮区攻略のピークとなる時分であろうが、大型クエストを終えた今とあっては疲労感が先行してしまうことだろう。クーネ達のスタンスも根源には《無理をしない》という大前提があるので、これから無理に圏外へ足を運ぶこともないだろう。モチベーションの継続には休息も必要不可欠なのだ。
最後にコルネリオに一礼しつつ、女性陣の後を追って街路へと出る。
明日はレベリングそのものを取り止めて一日休みとするクーネ達の意見に影響されてか、俺達も同様の方針を取ることとなった。休息は重要である。とくに、明日に攻略を強行しようものならばヒヨリから反感を買ってしまうことなど火を見るよりも明らかであろう。
今日の日付は十二月二十三日。
――――明日は、この浮遊城で迎える初めてのクリスマス・イヴだ。
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