第3章 黄昏のノクターン 2022/12
37話 夕暮れの水面
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たことも手伝い、やむなくその場で装備を更新する。
安物の革鎧から、シンプルながらフォーマルなウェストコートタイプのベストとシャツにスラックスのセットに装備が一新される。やはり布系装備の特色であろう軽重量は身に付ければ文字通り肌で実感できるものだ。加えて防御力に至っては店売りの革鎧を凌ぐのだから驚かされる。身体を捻ってみるが、始めから成形された鎧とは異なり違和感はない。布の柔軟性故に挙動を妨げないという利点は大きいだろう。
「ふむ、やはり渡して正解だったようだね。似合っている」
「ホントにしっくりくるな………」
もしかしたら、この装備を継続して強化していけば、そのまま当分は一線級の働きをしてくれそうだ。未だ戦闘にて性能を確認していないとしても、ニオのように防御力を以て前線を維持するのではなく、機動力と手数で攻撃を相殺して隙を生じさせる俺のスタンスからすれば、この装備はまさに福音にも似た存在だ。
「燐ちゃん、すごいカッコイイよ!」
「ええ、なんだか風格があります!」
「………なんだか、本当にその道の人みたいな見た目よね」
「ちょっと威圧感がスゴイかなー……ボク的には、全然恐いとかじゃないけど……」
「まあ、アタイはアリだと思うけどね?」
そして女性陣から浴びせられる総評は喜んで良いものか悩まされるが、そんなものは構ったところで栓無き事だ。装備とはあくまで自身を強化する為の存在。外見で選り好みして、いざというときに恩恵に与れなかった場合ほど後悔しきれない事はないだろう。無論、俺の言えたことではないが。
「さあ、仕事は済んだ。君達も戻るべき戦いの場があることだろうし、引き留めるのも心苦しいというものだ。共に戦えたことを、誇りに思うよ……では、息災に」
すべては終えたと言わんばかりに、コルネリオは場を速やかに締めくくる。
彼等と共にする時間は終えたのだ。当初のスタンス通り、彼は俺達を尊重してくれたし、俺達に譲歩もしてくれた。それは、今思えば貸し借りという相互間の利害勘定を発生させないための線引きだったのかも知れないとさえ思える。だからこそ、終わりは呆気ないのだろう。
「コルネリオさん、聞きたい事があるの」
「………どうしたのだね?」
それでも一切の会話を受け付けないというわけではなく、ヒヨリの問いには僅かながらに反応するようだ。
「また、遊びに来てもいい?」
質問を受け、僅かな逡巡が沈黙を齎す。
そこはかとない刺々しさは、ともすれば拒絶の意思かと思わされるものの、しかしコルネリオは僅かに口角を上げて答えたのだ。
「……訪ねてきた友人を追い返すような真似はしないさ。それに、フォールンの情報を提供してくれた君達の友人に
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