第3章 黄昏のノクターン 2022/12
37話 夕暮れの水面
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しまう。
「………盛大にフラれたようだ」
視線を机の天板に落とし、盛大な溜息を一つ零す。
側近はボスの心痛にさえ見向きもせずに沈黙を以て横に立ち、もう一人は無言のままにスーツケースを差し出してくる。誰もコルネリオを労わらないまま時間が過ぎ去るのかと思いきや、ヒヨリが発言する。
「そう言えば、燐ちゃんってずっと同じ鎧だよね?」
「え、ずっと……って、いつからなの?」
投げかけたのは、俺でさえ気にも留めなかった疑問だ。いや、俺からしたら大した問題でもないから放置していただけなのだが、やはり女子とは細かな所に意識を向けられるものなのだろうか。
そんな思いはよそに、ヒヨリはクーネに投げかけられた疑問にあっさりと答える。
「えっとね……はじまりの街で買ってからだから………」
「……つまり、初期装備みたいなものってことね」
「失敬な。このコートはそれなりに優秀だぞ」
「それ以外は初期装備だって言ってるの。………リン君の事だから、ヒヨリちゃんにだけ良い装備をあげてるんでしょう?」
「………そういえば、そうだな」
指摘通りだ。コートを入手してからというもの、防具の更新はしていなかった。
なまじベータテストの頃のデータが頭に残っていると、その感覚からくる目安に基づいて装備を妥協してしまう考えがあったとも思える。確かにヒヨリを優先して強化していたという背景こそあった。だが、それはあくまで自分を疎かにしていた理由には為り得ないだろう。ましてや技量でどうにかなってしまっていただけに優先度自体は限りなく低かったのかも知れない。
「前線を支えるんだから、自分を大事にしないとダメ。じゃないと、貴方はいつか大事な人を危険に晒すことになるわ………ヒヨリちゃんとティルネルさんを守りたいんでしょう?」
「………そう、だな。俺が貰い受けよう」
不思議と、重みのある言葉には反駁の余地はない。むしろ後押しされた気さえしたことで、側近が差し出すスーツケースの取っ手を掴むとオブジェクトが輝いて霧散し、代わりに装備アイテムの名称の他にも、頭一つ飛び抜けた数値のボーナス経験値や取得コルが列記されたウインドウが現れる。コルや経験値は俺以外にも与えられたらしく、タダ働きが起こらなかっただけ安心できた。
そしてウインドウを精査したところ、部位ごとの名称の差異はあれど、シリーズとしての統一銘は【villain】。《悪人》を意する名を冠した防具を贈られたことについては複雑な気分であるが、しかし性能という面で言えば文句の付け様がない。ましてやスタートラインで入手できる店売りとは比べるだけおこがましいというものだ。
「袖を通してみると良い」
「………じゃあ、遠慮なく」
贈り主から言われ
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