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逆さの砂時計
Side Story
無限不調和なカンタータ 8
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界がどう転がって来たのかを伝える為に。望んでいた者がやっと現れたんだぞと、彼女に報せる為に。
 アオイデーはカールとグリディナの子孫を影で追い続け、僅かに残る特性を使い、勇者達の鼓動を歌にして彼らに届けた。せめて音だけでも後世に遺せたら、コーネリアの死は無駄ではなかったと……目覚めた彼女に誇らしく報告できると信じて。
 一頻り鳴いて気が済んだアオイデーは、小さな翼を忙しく動かして神殿裏に伸びる一番高い木に移った。いつもなら直ぐ様アルスエルナに帰るのだが、今回は「彼」が居る。暫くはこの木の枝が宿代わりだ。
 枝葉の隙間に覗く直立姿勢の「彼」は、何をするでもなく金色の目で空を見上げ、真っ直ぐ長い金髪を風に遊ばせている。
 中性的な顔立ちに純白の長衣が引き立てる凛とした雰囲気。
 まるでコーネリアみたいだと言えば、彼女達はどんな反応をしただろう。
 コーネリアが産まれる前……やけに興奮したカールが、珍しく一生懸命に自己主張していた場面を思い出す。

 「ずーっと考えてたんです! これの他には一歩だって譲れません! 女の子だったらコーネリア! 男の子だったら絶対」

 「アーレスト」
 カールの言葉を継いだ女声で意識が引き戻された。見れば、緩やかに長い金髪と藍色の目を持つ女が、長衣の裾を蹴りつつ「彼」に歩み寄っている。
 「悪かったわね。こんな所まで付き合わせて」
 「こんな所って……貴女ね。アリア信仰の中心部で迂闊な発言はしないで頂戴。折角司教の座に就いたのに、数時間で取り上げられたら洒落にならないでしょ」
 「あら。本来は猊下にお伺いを立てる必要なんか無い地方の司教座承認儀式を、この忙しい時期に、わざわざ呼び付けてまで、一方的に執り行ってくださったのは、完っ全に神殿側の都合でしょう? 飼い犬の恭順ぶりを確かめる意図でもあるんでしょうけど、迷惑極まりない強行予定表のおかげで、私達は無駄にげんなりしてるんだもの。愚痴くらいはお赦しくださるわよ」
 「程度を弁えなさいと言ってるの。本当、プリシラは猊下が嫌いねぇ」
 「ええ。猊下に限らず、頭を使わない上司は全員気に入らないわ。どうやって排除してやろうかしら……ふふ。考えるだけでわくわくする」
 「逞しいのは良いけど、手段に溺れて身を滅ぼさないでよ? 頼りにしてるんだから」
 「分かってる。だから貴方を協力者に選んだのよアーレスト。期待してるわ」
 「ええ、努力はしましょう。後輩を扱くのは私の得意技よ」
 二人は聖職者に有るまじき黒い笑みを浮かべて、軽く肩を叩き合う。
 産まれる前から「彼」の近くに居たアオイデーには何の話か判っているが、この会話だけを切り取れば叛意有りと指摘されても仕方ない。人影が無いのを承知で話しているにしても、見守る小鳥は内心ひやひやだ。
 長い歴史を持つ
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