Side Story
無限不調和なカンタータ 8
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当然ね」
『お、ぅ?』
「とっくの昔に滅んだ国での話よ。未練も興味も無いわ」
『……』
陽光を遮る石壁の内側に隠された、正統な王の血を継がない王女。
出生を秘匿していた王妃と何者かの間に産まれ育った当時は、言動に枷を填められ、足裏を直接地面に降ろす機会も無く、宛てが無い編み物や、たまたま聴こえた歌を覚えるしか、やる事が無かった。
それが、ほぼ他人の親兄弟を滅ぼしてくれた何処ぞの国のおかげで自らの意思を手に入れたのだから、つくづくおかしなものだ。
村中できゃあきゃあと走り回るコーネリアの子供達を涙目で見下ろし、微笑む。
「アンタはこれからどうするの?」
『なにがだ?』
「神々の気配が消え始めてるでしょ。戻るって言うなら……」
『不要だ。私は堕天した身。二度と天上には帰らん』
「そ。じゃあ、頼みがあるんだけど」
『なんだ?』
「私と契約して。アンタが特性以外で放つ音総てを、私の力で消し去るわ。気配も断つから、近距離で特性を使わない限りどんな相手にも見付からない筈よ。アンタがドジさえ踏まなければ、あらゆる危険と生涯無縁でいられるってわけ。その代わり……これから先、私に何かあったら、あの子達に音で伝えて欲しい物があるの」
『伝言か』
「ええ。コーネリアが産まれる直前のカールの話、覚えてる?」
『いろいろ言ってたな……多すぎてどれだか見当が付かんぞ』
「名前よ」
『ああ、あれか』
「もしもアンタが見てる間に調律の力を持つ子供が産まれたら、あの名前を付けさせて欲しい。アンタなら産声で判るし、別に男でも女でも不自然じゃないでしょ?」
『やたら跳びまくるコーネリアの音を辿った以上に面倒だな。自分でやれば良いだろうに』
「だから、何かあったら……よ」
この時、既に予感があったのか。
彼女はこの数十年後、聖天女とよく似た音を纏う女の力で封印された。恐らく人間が絶えない限り……もう、目覚めないだろう。
それほど強固な眠りに堕ちたのは、他ならぬ彼女自身がそう望んだからだ。
事実上世界から存在を切り離し、あらゆる視線を避けて隠れていたアオイデーの前で。
彼女は自ら封印して欲しいと、女に願っていた。
アリア信仰が拠点として築いた純白の宗教国アリアシエル。
その一番都市・リウメに建てられた主神殿の下で、彼女は深く眠っている。
アオイデーが何度となく訪れても、やはり意識が目覚めた音はしない。或いはアリアの力に関わらず、自身で起床を拒んでいる可能性もあるが。
コーネリアを喪った彼女は、笑っていても何処か虚ろに見えた。カールもコーネリアも居ない世界には耐えられなかったか。
……それでも。
神殿の屋根に降り立った小鳥は、ぴるるるるっと美しい声で鳴いた。世
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