Side Story
無限不調和なカンタータ 8
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その綺麗な羽毛、千切って売り飛ばしてやろうか!」
『あっはっは! 照れるな照れるな』
「グリディナさん、顔が赤いよ? 大丈夫?」
「うがーっ! もう、なんなのこいつらぁッ!」
目蓋を閉じれば浮かぶ情景に、自然と頬が緩んだ。
誰かが隣に居る鬱陶しさこそが幸福なのだと教えてくれたのは、何の皮肉か、彼女が棄てた筈の種族と彼女を罪と吐き捨てた種族。
賑やかで騒がしくて喧しい声。なのに、胸の奥をじわりと温める音。
「大好きです。グリディナさん」
ゆっくりと穏やかに。
でも、あっさりと駆け抜けた優しい時間。
失っても消えない温もりは、代を経て継がれていく。
『コーネリアは勇者達と共に死んだようだ。戻って来る気配は……無かった』
「そう」
『止めなくて良かったのか?』
「何を今更。アンタだって、「子供を残して村を出て行く辺り、さすが母娘。そっくりだなー」とか言って、笑ってたでしょうが」
『すまん……』
「あの子が選んだ道よ。私達が口を挟む問題じゃないわ。……でも」
『グリディナ……』
「……莫迦みたいね、私。何の為にあの子を村に託したのかしら。こうなると判ってたら……もう少し、長く……一緒に居てあげても……良かった……っ……」
見た目まだ若い未亡人が村にどんな形で必要とされるか、彼女は知っていた。
そして、人間としては長期間一ヶ所に留まって生きられない彼女が、人間として産まれたコーネリアの傍に居るのは難しい。
だから、離れた。
いつかは必ず置いていく。なら、まだ幼い内に。
新しい結婚相手を押し付けられる前に村を出て。でも、捨て切れなくて。
人間には見付け難い山奥からずっと……母親を待ち続ける小さな背中をずっと、見守っていた。
夫婦になったコーネリアとウェルスが、二人の子供を実家へ預けて勇者と旅を始めてからは、アオイデーが勇者一行を、グリディナが村の子供達を、それぞれ遠くで見守り続けていたのだ。
『なぁ、グリディナ。前から尋きたかったんだが……お前、元々は人間世界で生きていたのか?』
「……どうしてそう思った?」
『神にも悪魔にも大した意味を持たない人間の結婚って言葉で露骨に動揺してたし、人間生活に慣れるのが異常に早かったから……か。観察してるだけじゃ身に付かない技術も見せてたよな。主に、刺繍……とか。あんなもの、他の村女の誰もしてなかった。というより、刺繍そのものを知らないんだろう。まさか、悪魔の趣味とは思えんが』
「……見掛けなくて当然だったのね。表に出さなくて良かったわ」
『?』
「小さい頃に教えられたから、一般的な物だと思ってたのよ。人前でする作業でもないし、皆自宅でひっそりやってるんだとばかり。考えてみれば、王族と平民じゃ違ってて
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