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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
心の温度差
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に塗りつぶす。思わず目を瞑ったマサキが目眩ましの余韻で明滅を繰り返す視界を閃光の放射元に向けると、そこでは未だ光を放ち続けている長方形の物体が、今まさに変形していたところだった。
 まず目を引いたのは、仄かに青みを帯びた銀白色の刀身が放つ光沢だ。インゴットの時から放っていた、しっとりと濡れたような艶やかな輝きは、他の武器とは全く別のテクスチャーマッピングが施されているのではと思ってしまうほど。薄い刃に細い刀身と相まって、一級の美術品としても通用するであろう優美さだ。水色で円形の鍔と銀白色の柄が続くシルエットは、片手直剣としてはやや短め。リーチがない分取り回しはしやすいだろう。

「おおっ……」

 その美しさに目を奪われていたらしいキリトが、思わずといった風な声を漏らした。自分の武器でもないのに、と非難する人物はこの場にいない。声を漏らすのも仕方ないと周囲を納得させるだけの美しさを、その剣が持っていたからだ。

「《ネスライトブレイド》――これも初耳ね。多分、名鑑には載ってない剣だと思う。試してみて頂戴」
「……うん」

 銘を確認したリズベットから、エミは真剣な表情で剣を受け取ると、ウィンドウを操作してそれを装備。マサキたちから数歩離れて構え、感触を確かめるように、二、三度振るった。空気が切り裂かれるひゅんひゅんっという音と共に、白銀の剣閃が現れては消える。

「わ、これ、凄い……扱いやすいし、手にも馴染んで……さっすがリズ!」
「褒めたって割引はしないわよ。……まあでも、あたしも驚いてるわ。まさか、このレベルの剣が二本続けてできるなんてね」

 口調こそ冗談めかした風のリズベットだが、その顔には我が子を褒められた母親にも似た誇らしさが浮き出ていた。エミと二言三言交わした後、心なしか弾むような足取りで鞘を見繕いに保管スペースへ向かっていく。

「あ、あのぅ……その剣、ちょびっとだけ振らせてもらったりは……」
「ちょっと、キリト君! そんなみっともない真似しないの!」

 ウズウズと両手を震わせるキリトをアスナが叱りつけると、工房に温かな笑い声が満ちる。そんな光景を、マサキはどこか遠くを見るような眼差しで眺め――。
 音もなく、何も残さずに。文字通りの瞬間移動でその場を去ったのだった。



 ほんの一瞬だけ暗転した視界に、見慣れた一本道が色彩を伴って飛び込んでくる。黒ずんで判読不能な木彫りの看板を掲げ、昼前だと言うのに開店の兆しが見えないNPCアイテムショップが一軒と、十軒程度の民家しか存在しない殺風景な田舎道。もう住み着いて一年以上を数えた《ウィダーヘーレン》のメインストリートだ。
 マサキは《瞬風(ときかぜ)での遠距離転移によって課せられた長時間の硬直を《夕凪(ゆうなぎ)》によって無効化し、自由に
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