アインクラッド 後編
心の温度差
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き合ってよ、ね?」
「男なら一度決めたことをいつまでもぐちぐち言わないの!」
「一度だって了承した覚えはないんだが……」
エミと、何故かアスナの強い意向によって、エミの武器が完成するのを見届けることになってしまい、マサキはごとごとと響く水車の音に紛れて深々と溜息をついた。その前方で、リズベットがエミから受け取った《プレアデス・インゴット》を丁寧な手つきで炉の中に入れる。
「武器種は片手用直剣でいいのよね?」
「うん。とびきりのやつをよろしくね!」
「出来上がりのパラメータはランダムなんだから、そんな期待されたって困るわよ。それに、さっき鍛えたやつが会心の出来だったからね。今度はあんましよくないのになっちゃうかも」
「大丈夫大丈夫。その時はまたマサキ君とインゴット取って来るから!」
「誰が行くか。ギミックは分かったんだ、勝手に行って取って来い」
「えぇ!?」
すげなく断られたエミがややオーバーに驚くと、工房にいたマサキ以外の全員が思わず吹き出した。その光景に場違いな雰囲気を覚えたマサキが口をへの字に曲げていると、エミたちと同じように笑っていたリズベットが炉の中から赤熱したインゴットを取り出す。ハンマーを手にインゴットの前で膝を着いた彼女の顔につい数秒前までの笑顔はなく、色濃く浮かんだ真剣さが工房中の空気を引き締める。
「さてと、始めるわよ」
誰のとも分からない、生唾を飲み込む音。リズベットはハンマーを高々と振り上げ、反動をつけて真っ赤に輝く金属塊に叩きつけた。高く澄んだ鎚音が、振り下ろされるハンマーと同期して、二回、三回と工房に響き渡る。
武器を一から鍛え上げる場合、インゴットを叩く回数が多ければ多いほど完成した武器のパラメータは高くなる。今後ある程度長期に渡って使い続けようと考えるならば、成功か否かのボーダーラインは二百回といったところだろうか。
集った全員が固唾を呑んで見守る中、一定間隔で響く鎚音は百回を危なげなく通過。そのまま百五十回に達すると、《その時》が近付いたことを察したメンバー間の緊張が一段階張り詰めたものに変わり、同時に左手の裾が誰かに握られた。相手が誰かなどと分かりきったことを確かめることもなく、マサキはそれを振りほどこうとしたのだが、予想以上に強い力で握られているらしくビクともしなかった。こうなってしまえば雀の涙ほどの筋力値しかないマサキに打つ手などなく、諦めと投げやりさを込めて左手のコントロールを譲り渡す。
食道から遺産が逆流してくるかのような吐き気にも似た不快感に耐えること、更に数分。一定間隔で続く鎚音が、やがて二百三十回を数えたところで――不意にリズベットの手元から光が漏れた。その光は一瞬のうちに目を開けていられないほどの強烈な閃光に膨れ上がり、工房中を真っ白
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