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されど世界を幸せに踊りたい
第2話
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あと、門番の一人がヤザワ達を交渉をした男に話しかけた。

「ナバロ。いいのか?」
「ああ。手が足りない現状では、例えよそ者でも使うべきだ」

 男はヤザワ達が去った方向を見ている。

「レメディウスにナリシア。無事でいてくれ」

 彼の言葉は虚空に消えていくのだった。





 ヤザワとガユスは二人でデリラ山脈を登っている。ヤザワは普段の装備ともう一つ、呪符の張られた鞄を背負っていた。
 車が走れない難所が続き、歩き疲れ始めていた。
 所々で群れた毒虫が襲い掛かって来ていた。
 今もそうだ。近くの穴から、毒々しい色合いをした蟲達が現れ、ヤザワ達に向かっていく。

「ガーユースー」

 ヤザワは疲弊した声を伸ばしながら、ガユスを呼んだ。

「その呼び方をやめろ。力が抜けるだろうが」

 魔杖短剣〈贖罪者マグナス〉を抜いて、咒式を発動。
 化学錬成系第二階位|蟲壊殺(ムドア)で生まれた白色の煙である非有機リン系殺虫剤であるピレスロイド系化学物質のd―テトラメリンが虫達を覆う。昆虫類の神経細胞上の受容体に作用し、脱分極を生じさせる神経毒が毒虫達を殺した。
 薬きょうを拾い、ガユスはため息を吐いた。

「おい。今どのへんだ」
「おかしいですね。この辺のはずなのですが」

 地図を取り出したヤザワが現在地と合わせていく。取り出した携帯端末を操作していた。
 周りを見渡して木々一本見えない殺伐した光景に、再度ガユスはため息を吐く。

「大丈夫です。わかりましたから。拙者は詳しいのです!」
「何に詳しいのか」

 歩き出すヤザワを追って、ガユスは足を動かしていく。
 数分もしないうちに洞窟が大きな口を開いていた。だが、彼らはその近くの大岩の影で足を止めていた。
 何せ傷だらけの男女がそこで倒れていたのだった。

「行き倒れですか」

 手を合わせようとするヤザワの頭をガユスが引っ叩く。

「馬鹿野郎! まだ息があるだろうが!」

 ガユスは懐から治療用の咒符を取り出して、倒れ伏す二人の男女に張っていく。
 ヤザワも仕方なさそうに、背負っている鞄から食料と飲み物を取り出す。

「どうやら長い間食べていないようですね。いきなり固形物を食べると胃がびっくりするので粥を作りますね」
「ああ。まったく。持って来た治療用の呪符を使い切ってしまいそうだ」

 行き倒れの男女を救うため、二人は全力で行動していく。
 傷だらけの男を見たガユスが驚愕の声を上げた。

「おい! この男、咒式博士のレメディウスだ! 」
「ラズエル咒式総合社の跡取りの! 彼の咒式理論を書いた本は拙者も持っています。なぜ彼がこんなところに」

 困惑交じりの視線をガユスとヤザワは交わらせた。

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