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IS インフィニット・ストラトス〜普通と平和を目指した果てに…………〜
number-36
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。見上げるようにしなければならないため、それが上目遣いになり、更に悲しげな印象を与えてくる。
 普段の彼女の活発さや天真爛漫さからは想像もできないほどのか弱さだった。


 束は静かに鈴の言葉を聞いている。この四日の間にいろいろ聞かれていたことは蓮も束を通して聞いていた。それがどんなものであるかは具体的には聞いていなかったのだが、束は束で鈴が自分なりに出した答えを聞き届けようとしていた。
 例えそれがどんなものであろうと、束は受け入れるつもりでいた。蓮がどう出るかは分からないが、それでも彼女が自分で考えて出した結果なのだから、それを尊重する気でいる。


「あたしはもう聞いてしまっている以上もう戻ることは許されない。ううん、他の人が許しても自分が許せない。確かに計画が失敗することは怖い。だけど、戦って死ぬのはもっと怖い。麗菜さんに聞いたんだ、どうしたら戦場から生きて帰ってこれるんですかって。そしたら、生きることにしぶとくなることって言ってました」
「……それはまた」
「ふふ、あの子らしいね」
「あたしにはそれが意外でした。戦場の中で生き残れるのは強い人だけって思ってたから。あの人はそれも違うって言ってたけど」


 鈴から紡がれようとしていた麗菜の言葉は蓮に引き継がれた。


「強いだけじゃ、足りないものはたくさんある、か」
「……! そうです、ただ強いだけじゃ、最後の最後で取り返しのつかない大きなことが起きてそれに対処できない。生きることにしぶとければ、常に何が起こるか警戒しているから何があっても対応できるんだって……。だから、だからっ!」


 言葉を強く打ちきった鈴の瞳には強い意思の炎が燃え上がっていた。強い気持ちで覚悟を決めた強者の顔になっている。


「あたしは生き残る。どんな激戦になっても生き残ってみせる。たとえみんな死んだとしても」
「……もう強いよお前は。そう考えられるだけでも。ただ……俺らは死なない。どうあっても生きていたいからな」


 微笑みながら鈴の頭をわしわしと荒く撫でる蓮。あーとなすがままになっている鈴をにこやかに見守る束。
 少しして蓮が撫でるのを止めると寮に向かって歩き始める。一緒に束も寮に向かっていく。一人残された鈴はぼさぼさになった頭を両手で押さえて俯く。その表情は夕日で一帯が赤く染まっているため分からなかった。もしかしたら真っ赤になっているのかもしれない。それは本人にさえもわからない。


「もしあたしにお兄ちゃんがいたら、あんな感じなのかな……」


 呟いて慌てて周りを見て誰もいないことにほっとした。誰かに聞かれていたら大変なことになる。絶対にいじられること間違いなしだ。


 彼女は両手を空に付きあげた。茜色の空に白い雲が何ともいえない景色
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