4部分:第四章
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第四章
「ねえ、ババ抜きしない?」
「お金かけないで」
「ババ抜き?」
まずは美奈が反応してきたのだった。
「それをしようっていうのね」
「そうよ。どう?ババ抜き」
「皆でさ」
「いいんじゃね?」
まずは良美が言った。
「やるんだったら」
「そうね」
そして美奈も言う。しかし二人の顔は背け合ったままだった。
「ババ抜き好きだし」
「そう。だったらね」
「やろうぜ」
皆二人が参加すると言ったのでまずはほっとした。そうしてそのうえでそのババ抜きをはじめる。二人は向かい合ったままだがそれでも顔は背け合ったままだ。そのせいでその魔闘きを思わせる圧倒的なオーラはそのままだった。皆それに耐えながらトランプを引いていく。
「うわ、俺がドベかよ」
「御愁傷様」
「残念だったわね」
男子生徒の一人が自分のところに最後に残ったそのジョーカーを見て思わず声をあげた。
「まあ次があるから」
「そうそう」
「ちぇっ、まあいいか」
とりあえず作り笑いで述べるのだった。
「じゃあまたやるか」
「ああ、またな」
「気が済むまで何度もね」
「それでいいよな」
皆はわざと明るく振舞いながら良美と美奈に顔を向けて問うた。
「またやるよな。また」
「どう?」
「ええ、やりましょう」
「俺もそれでな」
二人は憮然としたままであったがそれでも答えることは答えるのだった。そうしてまたババ抜きをするがそれでも圧倒的な負のオーラはそのままだった。そうして。
結局休み時間は終わりまた授業になってそれからまた休み時間になってババ抜きをしてそうしてまた授業になってそれから休み時間に入ってババ抜きをする。そんなこんなで昼休みになったが二人の仲はずっとそのままであった。
「何か全然よくなってねえじゃねえか」
「どうしようかしら」
皆は今度は学校の食堂でそれぞれのメニューを食べながら話す。弁当を持って来ている面々やパンを買っている面々は立ったり座り込んだりしてそこにいる。そうして食堂ではそこのそれぞれ左斜め下と右斜め上の席にいて食べている二人をそれぞれ見ながら話していた。
「このまま一日過ぎたら」
「っていうか今日だけじゃなくてずっとだったら?」
「ずっとっておい」
女の子の一人の言葉に皆は顔を青くさせた。
「こんな冷戦がずっと続くなんて洒落にならねえぞおい」
「っていうか最悪じゃねえか」
「そうよ、そう」
皆その青くなった顔でそれぞれ言う。言いながらも箸や手は止まらない。
「そんなことが続いたら」
「どうなるのよ、本当に」
「とりあえず食い終わったらまたトランプやるか」
「もう効果ないんじゃないの?」
「けれどそれしかないだろ」
中々絶望的なやり取りになっていた。
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