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ドラゴンクエストX〜紡がれし三つの刻〜正式メンバー版
一の刻・少年期編
第十三話「悲しき、冬との戦い」
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やスラリン達も神妙な顔で聞き入っている。

「だったらザイルみたいに闘いを止めれば良かっただけじゃないか!」
「いえ…ザイルとは…違い、私の…魂は魔王の…邪気に…染められきってました。その呪縛から…逃れるには…この方法しか…ありませんでした」
「染められて……、染まりきる…」

そこでリュカは依然スラリンに教えられた事を思い出した。
魔王の魔力に染まりきった魔物は最早元には戻れないと言われた事を。

「そんな…そんなの、あんまりじゃないか」

潤んで行くリュカの瞳を見て、雪の女王は微笑んで彼の頭を、頬を撫でていく。

「優しい子ですね。悲しむ…事はありませんよ。貴方は…わ…たしを、助けてくれた…のですから」
「僕が、助けた?」
「ええ、あの…ままでしたら世界は…冬の寒さによって…人々は…冬を憎み…ながら…滅んでいたでしょう。それは私に…とって、何よりも…耐えがたい事。でも、貴方のおかげで」

そんな雪の女王の体はきらめきながらゆっくりと消えていく。

「ありがとう、これからも…冬を、好きでいて……」

そして後には何処までも透明な水溜りと、青く澄んだクリスタルが残されていた。

ベラは溶けた氷から解放されたフルートを手に取ると、リュカの元に歩いて行く。
スラリン達やヒー達に囲まれているリュカの肩に優しく手を置いてやり、声を掛けようとするとリュカが手を付けている水溜りにポツポツと零れる涙が波紋を広げていた。

「ねえ、ベラ」
「…何?」
「僕、いい事をしたのかな?」
「何故そう思うの?」
「だって、だって……雪の女王は悪い奴に操られていただけじゃないか。それなのに僕は」

ベラはそんなリュカを抱きしめ、背中を優しく擦ってやる。
リュカはベラにしがみ付いて小さな声で泣き始め、スラリン達やヒー達も心配そうに擦り寄って行く。
ザイルはそんな光景を見て、俯きながら「ゴメン」と小さな声で呟く事しか出来ないでいた。

「リュカ、貴方は間違いなく良い事をしたのよ。雪の女王も言っていたじゃない、「ありがとう」って」
「でも、でも…」
「今は泣いてもいいのよ、誰も笑ったりしないから」
「うっ、うっ、ベラ。うわあぁぁ〜〜〜〜ん」

泣き続けるリュカをベラはずっと抱きしめていた。


=冒険の書に記録します=

《次回予告》

春風のフルートは取り戻したけど、雪の女王は可哀想だった。
本当は悪い人じゃ無かった筈なのに…
でも、これで春が来るんだ、早くお城に戻らないと。

次回・第十四話「訪れた春」

「また会おうね、約束だよ!」


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