2部分:第二章
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しろ昨日教室の中で喧嘩していたことはもう皆知っていることである。それが理由と考える方が自然であった。
「それはそうだけれどな」
「だからでしょ。だから今あんなふうになってるのよ」
「参ったな」
そしてここでまた言うのだった。
「こりゃな。どうしたらいいかな」
「とりあえず。何とかしないと」
「駄目だぜ、ありゃ」
既に答えは出ているのだった。仲を取り持つしかない。
しかしそれと共にそれが極めて困難なこともわかっていた。何しろ皆今さっき握手させようとして吹き飛ばされたばかりであるからだ。
「よし、それならな」
「秘策があるの?」
「これだよこれ」
男子の一人はここで何処からともなくケーキを取り出してきた。見事なチョコレートケーキである。上のチョコレートのラッピングもまた実にいい。
「これ食ってもらうってのどうだ?」
「ケーキを?」
「あの二人の大好物だったよな」
「ええ」
「確かにね」
皆このことも知っていた。ケーキは二人共よく食べている。大好物なのである。
「これを二人同時に食べてもらってな。それでどうだ?」
「大好物を食べて雰囲気をよくしながらってことね」
「ああ。それで仲直りしてもらう」
彼の考えた秘策とはこれであった。
「これでどうだよ、これで」
「悪くないかもな」
男子生徒の一人がそれに頷いてきた。
「少なくともやってみる価値はあるな」
「そうだろ?だったらすぐにな」
「よし、やりましょう」
「思い立ったが吉日よ」
こうして皆はまた二人のところに向かう。そうして相変わらず顔を背け合っている二人の前にそれぞれケーキを差し出すのだった。
「何だよそれ」
「何よそれ」
良美も美奈もまずはむっとした顔と声で皆に応えた。
「いきなり出て来たけれどよ」
「どうしたのよ」
「ほらほら、ケーキよケーキ」
「実はよ、さっき貰ったんだけれどよ、喫茶店でな」
この学校には喫茶店もあるのである。そこのケーキというわけだ。
「これ、どうかなって思ってな」
「ほら、美奈の好物じゃない」
男は良美の、女は美奈の周りに集まりながらさりげなくではなく露骨に態度に出して話している。
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