第十九話 歪みの吐露
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ゃんと作られてるはずだって」
「そ、そんなものどこにーーー」
「えーっとぉ〜…………あ、あった。ほらそこ」
「え……?どこ……?」
「おし、行くぞっ!」
「どこなのーーーキャ!」
思いがけない加速にアスナは軽く悲鳴をあげたが、そんなものはおかまいなしにリュウヤはスピードを上げる。
向かう先にあったのは行きの道のりにはなかった、壁にできた空洞。
その先は見えなかったが、リュウヤはアスナを引っ張り迷いなく飛び込んだ。
そう、まるで“飛込み台から踏み切るように”。
光が見えたのは先ではなく、真下だった。
彼らが飛び込んだ先にあったのは空中。
その身を空に投げ出したのである。
「き、キャァァァァァ!!!??」
「あ、やべーーー詰んだ」
「う、ウソでしょ〜〜〜っ!?」
リュウヤは合掌しながら、
アスナは悲鳴を上げて、
ーーー空を舞った。
「あっはっは!なんとかなったなぁ〜!」
「ほ、ほんとに死ぬかと思った……」
「な、言ったろ?逃げ道はあるって」
「もう少しマシな逃げ道が欲しかったわよ!」
ドヤ顔で言うリュウヤに、アスナは本気で怒鳴り返した。
それでもリュウヤは笑うだけで、アスナの気力は空振りに終わる。
アスナが怒るのもムリはない。
宙を舞った時点で死を覚悟したリュウヤとアスナだったが、地面との距離が半分を切ったところで強制転移が起き、普通に、ノーダメージで、着地ができたのだ。
強制転移するなら初めからそうしてよっ、とアスナは心中で憤る。
これを考えたデザイナーはーーー当然茅場だろうーーー先ほどのボスとは違う意味でタチが悪いと言える。
だが、そんな心境になれるのもリュウヤとアスナが弛緩できる環境にいるということだ。
普通ならプレイヤーが大声を出したならばモンスターが押し寄せてくるのだがーーー
「けど、転移したところがまさか村だったなんて……」
「ま、十中八九インスタンスマップだろうがな」
「それでもいいわ。休めるならなんでも」
「それについちゃ、同感だなぁ……」
息を逃がしながらリュウヤはソファに寝転がった。
リュウヤとアスナは、村にあった誰もいない家屋を借りてそこで休憩を取ったのだ。
村自体は圏内の扱いではなかったが、建物内なのでシステム的に音が漏れることはまずない。モンスターに襲われることもないというわけだ。
アスナもリュウヤにならって、身体を休ませるためにソファに身を委ねた。
家に入ってすぐ火を入れた暖炉が、パチパチと音を立てる。
もう春とはいえ影に入ると少々寒いが、暖炉のおかげで部屋はポカポカと気持
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