第十九話 歪みの吐露
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いかかる。
その威嚇行為は、紛れもなく戦闘態勢へと移行する前段階だ。
応じて戦闘態勢を取ろうとしたアスナは、しかし隣から伸びてきた手によって警戒心が吹き飛んだ。
その手がアスナの手をギュッと握ったのだ。
「なっ…………ちょ………!?」
眼前の敵への警戒が真横の人間に移る寸前、暴挙を犯した自覚のない彼は小さく呟いた。
「俺の手、離すなよ」
その言葉と同時に三つの事象が一辺に起きた。
リュウヤの右手が閃き、《ザ・ルー・ガルー》の顔面ーーー正確には瞳で爆発が起きて、《ザ・ルー・ガルー》だけでなくリュウヤとアスナをも巻き込む煙が辺りを充満した。
視界が遮られ、どうしていいかわからないアスナは言われた通りにリュウヤの手を離さないことしかできない。
「逃げるぞっ」
そんな声とともに握られた手がぐんと引っ張られるのをアスナは感じた。
そのまま引っ張られる方向へ身を委ね、そのまま走ると、すぐに煙の外へと抜け出すことができた。
逃走経路は考えていたらしく、その足の一歩一歩に迷いは見て取れない。
しかし、
「ねえ、逃げるって言ったけど、どこまで逃げるの?」
フィールドボスなどは基本的に一定の範囲から出ないのだ。その範囲がどこまでかわからないが、その範囲を抜けさえすればいい。
その常識に従った判断は間違いではない。が、ここではそうとは限らなかった。
「残念ながら、あいつはどこまでも追ってくるぞ。範囲なんて関係ねえ。そこらのザコと一緒でタゲ外さねえと逃げれん。
まあそのタゲもボス級なだけに簡単には外れない。タチわりいにもほどがある」
肩をすくめてそういうリュウヤだが、この状況に対する焦りはないように感じる。
反対に、事実を告げられたアスナの表情は暗い。
先ほどの爆破と煙幕があっても、おそらく今もリュウヤとアスナはターゲットにされているだろう。
それに「逃げる」と言ってもここまで来た道のりに逃げ隠れできるようなところは何もない。
死の匂いがアスナの鼻をくすぐる。
生の光が遠ざかっていくのを感じる。
走っているのに後ろへ引きずられていく感覚がある。
これじゃあ、もうーーー
「ていっ」
ペチッ、と小さな音が鳴る。それはリュウヤのデコピンがアスナの額を軽く小突いた音だった。
「ーーーいたっ……な、なにするのよ!」
「そんな顔すんなよぉ〜、ほんとに死ぬよ?」
「ほ、ほんとにって……!」
「あのな、これ一応ゲームだよ?突破口はもちろんあるってば」
死が目前に控えているような状況にも関わらず、リュウヤは子どもをからかうような口調を取り続ける。
「あんな大物と二連戦なんて普通にムリだろ〜、どう考えてもさぁ。だから逃げ道はち
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