第十九話 歪みの吐露
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「大丈夫。ちゃんと倒したから、もう安心してね」
NPC相手になにを言っているんだろうと自分でも不思議に思いつつそう言うと、少女はしかし笑顔を見せることはなく、反対に瞳を潤ませた。
「どうしたの?」とアスナが問いかける前に、少女が声を発した。
「それ……なら…………はや、く…………にげ……て…………きちゃう、から………はやくーーー」
いい終えると少女はすうっとまぶたを閉じた。
少女の発言の意図をうまく飲み込めないアスナは、考えるのを後にして少女を連れて降りようと少女へと手を伸ばした。
そして少女の肩に触れたその時。
「跳びのけアスナッ!!」
突如後方から叫ばれた声。
肩が跳ねて一瞬固まるが、アスナは即座に回避行動をとった。
十段弱あった階段を一気に飛び降り、リュウヤの隣へと戻ったアスナは、説明を求めようとした。
だがその必要もなく、目の前にその理由が出現していた。
「なに…………あれ…………!?」
神殿の中央からーーー具体的に言えば、その中にあった祭壇の上に寝かされていた少女の体から、禍々しい瘴気のようなものが噴出していた。
その黒い瘴気は次第に増えていき、やがて少女と神殿をも巻き込んでいく。
そしてそれは少女ののどを引き裂くような悲鳴と共に、神殿と少女を取り込んで巨大なオオカミへと姿を変えた。
オオカミと言えど、先ほどリュウヤとの闘いで消えた《ザ・ベナンダンテ》のような姿ではない。
《ザ・ベナンダンテ》は茶色の毛色を持ち、ある種一般に想像される代表的なオオカミが、二足歩行を可能にしただけのものだった。
だがいま目の前にいるモンスターは違う。
毛色は禍々しい瘴気をそのままにした黒で染め上がり、腰には布が巻かれており、右手にはその巨大な体躯に似合うだけの長槍が握られている。
つまり完全な人型であり、先ほどの《ザ・ベナンダンテ》をはるかに超える戦闘能力を保持しているのだ。
その者の名はーーー《ザ・ルー・ガルー》
およそただのクエストボスとは思えないほどのプレッシャーを与える敵に、リュウヤが忌々しそうに眉をひそめ舌打ちする。
「チッ………な〜る、そういうことね。やってくれたなクソッたれぇ……」
「な、なにがどうなってるの!?」
「簡潔に言えば、俺が排除したかったのはさっきのオオカミじゃなくて、こっちのオオカミだったっつうわけよ」
「じゃあどうするの?このまま戦うの?」
「アホンダラ、んなわけに行くか。こちとら長期戦で疲れてんだ。こんな状態じゃ俺ら普通に死ぬって。つうことで〜、逃げましょうか」
リュウヤがそう言った瞬間、《ザ・ルー・ガルー》が咆哮とともに槍を薙いだ。
それによって発生した風圧が、リュウヤとアスナへ襲
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