第十九話 歪みの吐露
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邂逅一閃。
リュウヤの槍が、オオカミのツメが、光をまとって唸りを上げる。
交錯する各々の武器。そしてーーー
ザシューーーーーーパリィィィィィン。
「へへっ…………俺の、勝ちだ」
貫いたのはリュウヤの槍。
オオカミのツメは一歩届かず、彼の数センチ前で止まってしまった。
HPが0になった《ザ・ベナンダンテ》は派手な音を響かせながらポリゴンと化して消えていった。
降り注ぐポリゴンの雨に打たれながら、リュウヤはアスナの元へと足を向けた。
「お疲れ〜。いま何時?」
「………11時半よ」
「ん〜、とすっとだいたい3時間くらいかぁ。キツかったなぁ」
あっはっは、と笑うリュウヤ。
つい先ほどまで死と隣あわせの戦闘をしていたにも関わらず、のんきなものだとアスナは呆れていた。
そのアスナと言えばーーー
「疲れたっつってもまだ仕事は残ってる。立てるか?」
極度の緊張感から解放されたからか、アスナは膝を折って座り込んでしまっていた。
正直こんなに疲れたのは50層のボス戦以来だ。
あれほど辛かった戦闘は他に数えるほどしかない。
けれど、それ以上にアスナの心を支配していたのは悔しさだった。
こんなにも疲労困憊だというのに、アスナ自身はなにもしていないのだ。
ただ後ろの方で、攻撃回避とカウンターを仕掛けるだけで前衛には一度たりとも出ていない。
それでも《ザ・ベナンダンテ》を倒すことができたのは、ひとえにリュウヤの戦闘技術あってのものだ。
彼のそれは、もはや畏敬などという言葉では収まらない。一周まわって呆れささえ感じる。
長時間の戦闘だというのに休憩を一切取らず、フィールドボスにも匹敵するだろう大型モンスターをほぼ独力で倒したのだ。
そして口では言っているが、彼の様子に疲労の色はあまり見えない。アスナより死のプレッシャーがあったというのに。
自分はなにもしていない。
そんな思いがアスナの四肢に力を入れさせた。
「立てます……。それで、なにをすれば?」
差し伸べられていた手は掴まず、アスナは一人で立ち上がった。
素直じゃねえなぁ、とリュウヤは苦笑しつつ、本題へと入った。
「お前はあの祭壇の上に寝てる人を連れてきてくれ」
「………それは、わたしがする必要があるんですか?」
「あるある、ありますとも。お嬢様はそんなご状態ですので私めが他のモンスターが湧出しないか警戒しなければいけませんし?理に適ってると思いますが?」
「分かりました。………けど、その言い方やめてください。刺しますよ」
「はいはーーーって、おっそろしいことサラッと言わないで!?本気じゃな
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