第十八話 ミッション開始
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情報はないのね、とアスナが嘆息したと同時に、リュウヤは曲がり角を出て行っていた。
一歩遅れてアスナもリュウヤに追随する形で出て行ってみると、そこに広がる光景に一瞬言葉を失った。
そして理解する。リュウヤが「お祭り」と言った真の意味を。
「これ……祭壇……!?」
円形に形づくられた広場。
中央にはリュウヤの言った通りの、いかにも二足歩行します感が漂う人型のオオカミがあぐらをかいてプレッシャーを与えるように鎮座していた。
その名は《ザ・ベナンダンテ》。
定冠詞がついているので、ボスなのは明らかだ。
ごくり、とアスナはのどを鳴らす。
しかし、アスナたちはまだアウトレンジにいるのだろう。五メートルはゆうに超えるであろう怪物はその瞳を閉じたまま微動だにしない。
けれどアスナの視線はそちらではなく、その奥に吸い寄せられた。
まるで神殿のような建造物に。
それは、一言で表すならば白亜の殿堂。
三段の段階状に作られた土台に、荘厳な意匠が施された天井を支えるシンプルな柱が四柱。
その真中には台座が置かれていた。
そしてその全てが白に覆われ、正に《聖域》と呼ぶにふさわしい神聖さが伝わってくる。
しかし、台座の上に寝かされているあるものを見て、その周りに飾られているものを見て、アスナの第一印象は瞬時に、ガラガラと音を立てて崩れ去った。
この状況はつまりーーー
「お察しの通り、《生贄》が差し出されてんだよ。あのクソ野郎にな」
アスナの思考を読み取ったかのようにセリフを吐き捨てたリュウヤは、その射抜くような目線を神殿の前に佇むモンスターへと送っていた。
そう、だからリュウヤは焦っていた。時間を気にしていた。
ことあるごとに「時間」という言葉を口にし、曲がり角でこの光景を先に見ていた彼がイラついたように舌打ちをした理由がこれだ。
生贄にされた人を救うこと。
彼の目的はつまりこれに尽きるということだ。
確かにアスナも生贄が捧げられているという事実を知ったらリュウヤのように焦って、なんとかして助けたいと思っただろう。
けれど、アスナにはそこまでの思いは、感情は生み出されることはなかった。
なぜなら、
「でもアレってーーーNPCよね?」
アスナが焦るのであれば、その生贄が《プレイヤー》だった場合のみだ。
《プレイヤー》ならば前述の通り彼女も焦ったであろう。
だが台座の上に、まるで供物のように着飾らされているのは《NPC》だ。
つい先日、攻略会議でキリトと口論になった時と同じだ。命を賭けるほどもない。
むしろ、“あんなもの”に命を賭けるくらいなら、階層ボスとの戦闘で果てることを選ぶ。
アスナはそういった意味を込めてリュウヤに聞いた
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