第十七話 ぐだぐた逃走劇
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クに、アスナは声を荒げた。
くくっ、と小さく笑ったリュウヤはしかし、すぐに表情を引き締めた。
「ま、冗談はさておきーーースリーカウントでスタートだ。俺の後ろについてこい。向かってくる敵は基本ムシだ。OK?」
「了解」
「じゃあ行くぞ。3、2ーーーんあっ、やっべ逃げろっ!?」
「はっ?」
なぜかカウントが終わる前にリュウヤは動いていた。呆けた声をだすアスナを置き去りにして。
気になって、カウントしていたリュウヤが見ていた先を振り返って見てみると、
「…………うそ」
「ば、バカ野郎!?止まってんじゃねえ走れぇ!!」
先を行くリュウヤから大声で叱咤され、固まりかけた思考と身体を回復させる。そして本能の如き判断力でパラメータ全開のダッシュを開始した。
先に逃亡を開始していたリュウヤに追いつくや否や、アスナはリュウヤに悲鳴に近い声で叱責した。
「あ、あなたね、ああいうことは早く言いなさい!!」
「し、仕方ねえだろ!?」
「仕方ないで殺されてたまりますかっ!」
「そこらへんは後で聞いてやるから、今は走れ!」
「〜〜〜もうっっ!」
言いたいことは山ほどあるのに、状況がそれを許さない。
なぜなら彼らは、大勢のオオカミに追われているからだ。
ちら、とアスナが後ろを振り返れば、まるでMPKに遭ったときのような数のモンスターが、すぐにでも追いつきそうな速度で追いかけてくる。
そのモンスターの正体は当然《インビジブルウルフ》だ。なぜ隠れていたのが見つかったのか、検討はついている。自分の非を認めたくはないが、おそらく二人が言い争っていた声に反応したのだろう。
徐々に距離を縮めてくる追っ手を見ながらアスナは歯を食いしばった。
(こうなったらっ……)
交戦しようと腰につったレイピアの柄に手をやった。だが、それを制するようにリュウヤが怒号を放った。
「何回言わせたら気がすむんだお前は!?さっき説明したろ!?戦ろうとするな!とにかく走れっ!」
「で、でもーーー」
「いいか、この少し先に安地がある。そこまでふんばれ!」
リュウヤは走るスピードを一切緩ませず、アスナに目的地を伝えた。逃げること以外の選択肢は取らせないためだ。
リュウヤの言葉に、当てのある逃走であることを知って安堵したのか、それとも逃げざるをえないと開き直ったのか。
どちらにせよリュウヤの思惑通り、アスナはひたすら走ることだけに集中することになった。
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