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ドラゴンクエストX〜紡がれし三つの刻〜正式メンバー版
一の刻・少年期編
第十二話「氷の館の対決」
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「困るだけでは済まないのよ」
リュカとザイルの勝負が止まった事を見計らい、ベラはザイルへと話しかける。
「困るだけじゃないって…どう言う事だよ」
「このまま春の訪れが無いと自然界のバランスは崩れ、人間界も、そしてこの妖精界にも甚大な被害が及ぶ事になるの」
「な、何だって!? そんな、雪の女王様はそんな事、少しも言わなかったぞ」
「でも事実それが事実よ。だからお願い、春風のフルートを返して。もう一刻の猶予も無いのよ!」
「フルート、返す」
「フルート、無いと春来ない」
「フルート、必要」
「フルート、皆の物」
「「「「やっ!」」」」
ベラとヒー達の嘆願にザイルは困惑している。
しかしベラはザイルが素直に話を聞いてくれると確信していた。
ザイルの目は先程とは比べ物にならないほど落ち付いているのである。
リュカとの全力でのぶつかり合いが彼の体に纏わり憑いていた邪気を撃ち払ってしまったらしい。
ベラは改めてこのリュカという少年の力に感心していた。
「どうするの?まだやるんなら相手になるよ」
「…いや、もう止める。まだ妖精達の言う事は信じられないけど、お前の言う事なら信じられる気がする」
そう言ってザイルは斧を下ろすと玉座の後ろに置いてある宝箱を開けた。
「ほら、これが春風のフルートだ。これを持って…」
『愚か者が』
「え、うわあああーーーーーーっ!!」
ザイルがフルートを手にした瞬間、何処からともなく声が響いて来て、ザイルは凍り付く様な冷たい風に吹き飛ばされた。
ザイルの手から零れたフルートは青白い姿の女性の手に握りしめられ、そのまま凍り付いてしまった。
『ふふふふ、これで私を倒さぬ限りは春風のフルートを手にする事は誰にも出来ぬ。つまりは不可能という訳です』
「じょ、女王様……な…んで?」
『子供だと思って手を抜いたのが失敗でしたね。やはり魂の奥底まで邪気で染め上げておくべきでした』
雪の女王はそう笑いながら凍り付いたフルートを放り捨てる。
その笑みはまるで見る物すべてを凍らせる様な冷たい笑みだった。
=冒険の書に記録しました=
《次回予告》
ザイルは悪い奴じゃ無かった。
騙されていただけだった。
ねえ雪の女王、もう止めてよ!
このままじゃ僕、冬を嫌いになっちゃうよ。
次回・第十三話「悲しき、冬との戦い」
ねえベラ、僕は……
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