ターン42 鉄砲水と魔性の甘味
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にはこんな日もいいだろう。
「本日は、手間をかけさせて申し訳ないですわ」
「いやいや。ちゃんと仲直りできるといいね」
ティーセットを片付けながら、ひらひらと手を振って送り出す。最後に一度だけ頭を下げてそのまま出て行った天下井ちゃんだったが、すぐに引き返してきた。
「忘れ物?」
そう尋ねると、ぶんぶんと首を横に振る。そのままドレスのポケットに手を突っ込み、可愛らしい小さな包みを引っ張り出した。
「そういえば、もうひとつ要件があったのを忘れていましたの。さあ、受け取ってくださいまし」
「えっと……?」
突き出してきたのでとりあえず受け取りはしたものの、これがなんなのかよくわからない。そんな思いが顔に出ていたらしく、心底情けないという表情で補足が入った。
「まったく、察しの悪い殿方というのは困りますわ。チョコレートですわよ、チョコレート。別に私1人からの物ではなくてですね、アカデミア女子寮一同からの日頃の感謝の形ですけども。中にメッセージカードも入れてありますのよ、大体10人分くらい」
「い、いいの?」
「そんな無粋なことを仰るとは、野暮な殿方もあったものですわね。こういうことを女性から2度も言わさないことこそが、本当の紳士の振る舞いというものではなくて?」
「あ、ありがとう……」
確かに、今年は去年よりもチョコ関連のものがよく売れた。年々いわゆる友チョコや自分チョコの概念が浸透してきているおかげで『チョコをもらう人』のハードルが低くなり、そのぶん1人当たりの買う量が増えてきているからだ。とはいえ、まさか僕自身がその恩恵を受けることになるとは思わなかった。儲けさせてもらっただけでもバレンタイン様々なのに、こんな役得までもらえるとは。
「それでは、ワタクシは帰らせていただきますわ。ホワイトデーにはちゃんと女子寮までお返しを持ってきてくださいまし」
「オッケーオッケー、任せといてよ!本当ありがとうね!」
今度こそ出て行った天下井ちゃんをしばらく見送ってから、改めて片づけに取り掛かる。いやー、まさか僕もチョコがもらえるなんて、幸せ幸せ。これで今年も夢想からもらえたりしたら、もう今年中の運全部使い果たしてもいいぐらいなんだけど。
「先輩、いますか?」
ちょっと妄想にふけっていると、ひょっこりとドアが開いて葵ちゃんが顔を出した。
「あれ、今日は休めって言ってなかったっけ?」
つい先日に僕が勝手に店をほったらかしてアモンとデュエルしていた間、彼女は1人でこの店を切り盛りしていてくれた。そのお詫びとして、今日は有給休暇ということにしておいたのだ。その彼女が、こんな閉店の時間になったというのに何をしに来たのだろう。
「私も色々ありましてね。はい先輩、遅くなりましたが
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