ターン42 鉄砲水と魔性の甘味
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「……確かにワタクシにも悪い点があったことは認めてやらなくもないですわ、ですけど彼女ったら」
「うーん。いまさら言い出しにくいのもわかるけどさ、どこかで一回は折れないと仲直りは難しいんじゃない?」
僕の言葉に黙ってうつむき、紅茶を優雅な仕草で飲むふわふわカールの髪形になぜか純白のドレス、そして長い白手袋といった完全にどこかのお嬢様そのものといった恰好の女の子。彼女は天下井ちゃん、以前光の結社騒ぎの際に夢想とデュエルを繰り広げたアカデミア生徒だ。
あの時は初対面の僕に問答無用で手袋を投げつけて決闘を申し込んできたり、それ以外にも利便性の概念をガン無視しているこのドレスが普段着だったりと色々アグレッシブ……というかぶっ飛んだ子ではあるけれど、実はその中身はそんなに悪い子でも常識のじの字もない子でもなく、案外素直ないい子である。もっとも、中身を知る以前に皆から距離を置かれがちなため友達ができづらかったりと苦労していたことは間違いないのだが。
ともかくそんな彼女もうちの味がお気に召したらしくこの春休みあたりから何回か僕の店に通っているうちにすっかり常連さんの1人になり、僕自身にもだんだん心を許してきたらしく最近は店が暇な時を見計らって悩み相談などもしてくるようになってきたのだ。その効果があったのかはわからないが最近はその人当たりも以前に比べればはるかにマシになってきて、それに伴い次第に友人も増えてきたらしい。よかったよかった……と思っていたのだが、今日はその友達と喧嘩して本気で悩んでいる模様。
「そう簡単に言いますが、このワタクシがいくら友人とはいえ庶民に頭を下げるなどとは」
あくまで強気な発言だが、その表情は重く沈んでいてカールした髪もいつもよりへなっとして見える。頭ではわかっているけれど、といったところか。でも、何をすればいいのか本当はわかっているのならば話が早い。いつぞやの葵ちゃんと同じく、ここに来たのも最後のふんぎりをつけるため、背中を押してもらいたがっているのだろう。だとすれば僕がここで何かを言わずとも、ただ話を聞いてあげればいい。ちゃんと話を聞く人がいれば、それだけでだいぶ楽になれるんだから。……なんでそれが僕の役なのかはさっぱりわからないけど。というか僕自身デッキに行き詰ってるのに、他人様のお悩み相談なんてなんで引き受けてるんだろう。
『情けは人のためならず、か。マスターらしくていいじゃないか』
そう励ましてるのか微妙に馬鹿にしてるのか判断しかねる台詞を一言だけ残して去っていくチャクチャルさん。別に、見返り目的じゃないんだけどね。
とまあそんなこんなで結局、話が終わるころにはすでに日が暮れてしまっていた。相談自体はともかく、思ったより世間話に花が咲いてしまったわけだ。ほとんど商売にならなかったけど、たま
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