4月
第1話『始まりの朝』
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手を振り返す。
全く、この二人は朝から元気だな。
それにしても中学生ともなると、家を出るのが小学生の頃に比べて少し早くなったな。まだ智乃は制服さえ着てないし。
「行ってきまーす!」
「行ってきます」
少し恥ずかしいが、俺も行ってきますとは言っておいた。
さて、いつもと違う新しい通学路を歩くのは新鮮な気分だ。
いよいよ新しい生活のスタートだな。
――――――――――――――――――――
「ひょっとして晴登ってさ、『急に目の前の曲がり角から少女が飛び出してきてぶつかった』っていうシチュエーション好き?」
「いきなり何だよ。マンガの読みすぎだぞ」
不意にかけられた莉奈の言葉を、俺は一蹴する。第一、何でそんなことを聞くんだよ。
「いや〜、実はそこにうってつけの曲がり角があるんだよね〜」
「え? まぁ確かに…」
莉奈は楽しそうに言った。確かに目の前には『うってつけの曲がり角』がある。見通しが悪く、少女じゃなくて車が出てきてもおかしくない。
「はぁ…もしそんなシチュエーションになったら、何か奢ってやるよ」
「お、言ったね?」
俺は莉奈をからかうつもりで賭けをした。マンガみたいな展開が現実で起こる訳がない。そう思っていたから。
だが、偶然とは起こるもので・・・
「「ぐはっ!!」」
その曲がり角を曲がった瞬間、晴登は誰かとぶつかった。
背は俺より少し高く、見たことのある顔・・・あれ、大地!?
「いってーな…」
頭を擦りながら起き上がろうとする大地に、先に立ち上がった俺が声を掛ける。
「大丈夫か? 大地」
「すいません…って晴登? それに莉奈ちゃんも」
「おっは〜」
ようやく大地は俺たちに気づいたようだ。そして安心した表情を浮かべる。
「良かった〜、道に迷ってたんだよ」
「あぁ、いつも通りね」
なるほど、そういうことか。俺は納得した。
実はこいつはかなりの方向音痴で、初めて通る道ならまず間違いなく迷うのだ。だから新しい通学路も当然迷う。
成績は良いのに、なぜだろうか?
「じゃあ大地も一緒に行こうよ?」
「そうさせてもらうわ…」
「最初から誘えばよかったな」
莉奈の提案に大地は間髪入れずに答えた。道に迷うんだから、さすがに仕方ないよな。俺も配慮するべきだった。
ちなみに大地とは小学校からの付き合いで、親友みたいなもんだ。遊ぶ時は、基本この3人だ。つまり、とても仲がいい。
「あ、晴登、あそこの自販でお茶買ってきて」
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