ターン42 鉄砲水と魔性の贈答品
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そろそろ止めることにしたんだよ。だから夢想、この勝負は勝たせてもらうよ?」
ちょっと調子に乗ってそんな大口を叩く僕をクスクスと楽しそうに笑って、夢想がそのまま流れるような動作でデッキに手をかけた。すると次の瞬間、これまでとはまるでレベルもランクも違う圧倒的なプレッシャー、物理的な質量でこちらを押しつぶしてきそうなほどの威圧感が辺りに満ちた。これまで僕も大概色々な相手とデュエルしてきたけれど、今彼女の発するオーラは下手をするとその誰をも上回っている。
これが、無双の女王の本気の片鱗。次のターン、彼女は全力で来る。知らず知らずのうちに頬を伝っていた冷や汗をぬぐい、せめてもの空元気で笑いかけてから最後の手札をフィールドにおいた。
「……カードをセットして、ターンエンド」
「ねえ清明。今ね、私は本気で楽しいの、だってさ」
そのまま次のターンにすぐ移るのかと思いきや、意外にもデッキトップに指をかけたままこちらに話しかけてきた夢想。一体どんな話になっていくのかわからない僕には、ただ黙って聞いていることしかできなかった。夢想も僕の反応は特に気にした風もなく、楽しそうに言葉を紡ぐ。
「このアカデミアに来てから、色々なデュエリストとデュエルしてきたけど。私はやっぱり、清明とデュエルするのが一番楽しいかな、なんだって」
「夢想……」
「貴方の隣でデュエルするときも、貴方とこうしてデュエルするときも。いつだって清明がいるときが一番、私は楽しくとのびのびデュエルができるんだよ、ってさ」
「ありがとう。でも、どうしたのさそんな急に」
「理由なんてないよ。なんだか今まで改めて言ったことがないなーって思うと、急にどうしても伝えたくなっちゃって、ってさ」
やっぱり明菜さんもぶっ飛んでるけど、それ以上に夢想の言動が僕には読めない。不意打ちでそんなまっすぐに言われたら、いくらなんでも照れるじゃない。あまりにも咄嗟過ぎたため気の利いた返しを考えることもできず、結局こんなことぐらいしか言えない自分が憎い。それでも、せめて僕の気持ちぐらいは伝わってくれただろうか。
「……ありがとう、夢想」
そんな僕の何の面白味もない返答を受けて、またクスリと笑う夢想。だけどその笑みには嫌味な部分はなく、見ているこちらも気分が晴れるような明るく爽やかなものだった。だから余計に、全身から立ち上るプレッシャーとのギャップが怖い。
「おかしな話しちゃったね、ってさ。それじゃあ、行くよ?私のターン!」
そうしたところで何がかあるわけでもないが、思わず身構える。さあ来い、夢想!
「魔法カード、ワン・フォー・ワンを発動!手札のモンスターカード、龍骨鬼を墓地に送ることでデッキからレベル1のモンスターを特殊召喚するんだって。来なさい、ワイトキング!」
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