ターン42 鉄砲水と魔性の贈答品
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いうか、なんというか、ね?
『面倒くさい……』
「なんとでも言ってよ。でもしょうがないでしょ?自分からチョコ下さいなんて、豆腐メンタルの僕に直接言う勇気はないよ」
『はい?ああ、うん、もう……いいや、マスターがやりたいようにやってくれ』
なんだか最後が投げやりだった気もするけど、チャクチャルさんの気配が去っていく。さて、僕もそろそろレッド寮に帰ろう。ここで待ってれば夢想も来るかな?なんて甘い期待があったことも否めないけれど、これ以上粘ると十代たちのごはんがなくなってしまう。
最後に戸締りをして店を出ると、もはや誰もいなくなった廊下に僕の靴音だけが響いた。3つのチョコレートがきちんと鞄の中に入っていることを軽く上から叩いて確認し、もう1度だけ周りに夢想がいたりしないかを見回し確認してみたりして……あ、はい、誰もいませんね。わかってますよ、ええ。別に寂しくなんてないもーん。
「さあ、帰ろう!」
未練を断ち切るためにあえて声に出してみるが、それががらんとした廊下に虚しく反響して余計にセンチな気分が増してしまう。まあこれ以上うじうじうじうじしてるのもいい加減みっともないし、今度こそきっぱり切り替えよう。それに、今年貰えないからってそれは夢想のせいじゃない。今年度は商売が忙しくて、吹雪さんから必勝作戦を聞くなどの対策とアピールをさぼっていた僕に責任がある。
そうだ、去年と違い何ひとつ夢想本人に対してやってこなかった僕の自業自得なんだ。さあ、切り替え切り替え。ほら、決して悪いことばかりじゃない。義理チョコならこんなにあるし、今日は夕日がきれいだ。すでに水平線にくっつきつつあるあの夕日と、その向こうからこちらに近づいてくる人影。忘れもしない、あのきれいな青髪の持ち主は……あれ。
「夢想!」
「こんにちわ、だって」
そこで一度、会話が途切れる。何か話しかけようかとも思ったけど、テンパりまくってる僕が今この場面で口を開いてもロクなことが言えなくて自己嫌悪になるのは目に見えている。夢想も夢想で夕日の加減のせいか顔を赤くして何かを言いかけようとするも、なぜかまた口をつぐんでしまう。
……どうしよう、なぜか気まずい。会えなかったときはあんなに辛かったのに、いざ会ったら会ったでまともに会話もできないなんて。でもこうやってすぐ隣で見てると、本当綺麗だなあ。茜色の風景によく映えるこの青髪もすっごいサラサラしてそうで、いっぺんでいいから撫でてみたい。まあ、そこまでいくとただのセクハラだからやらないけど。
「あ、清明?って」
「何?」
「あ、あのね。そんなに見られると恥ずかしいよ、だってさ」
「え!?あ、ご、ごめん!」
上目遣いでそんなことを言われ、そのあまりの破壊力にこっちまでくらくらしながらも視線を逸らす。そ
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