第二十二話 最初の卒業式その一
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最初の卒業式
一年でいる間は一年だけ、それが終われば二年生です。こんなことは言うまでもないことですけれどその時には別れも付き物です。これは避けられません。
今日は卒業式、三年の先輩達が卒業されます。遂にその日が来てしまいました。
「今日で終わりなんですね」
「そうね」
長池先輩とお部屋でお話をしていました。この日で先輩は天理高校を卒業されます。そのことを思うともう胸が張り裂けそうになります。
「ちっちともここではお別れね」
「先輩」
先輩の顔をじっと見て言いました。二人で向かい合って。
「何?」
「おぢばにはおられるんですよね」
こう先輩に尋ねました。先輩はいつも通り優しくて奇麗な微笑みを浮かべておられます。
「ずっと」
「ええ。天理大学に受かったから」
にこりと笑って私に言ってくれました。
「だからね。おぢばにはね」
「そうですよね。けれど」
「寂しいの?」
「・・・・・・はい」
泣きそうになるのを抑えながら先輩に答えました。
「先輩には。本当に何から何まで教えて頂きましたし」
「私何もしていないわよ」
「いえ、それは違います」
このことははっきりと否定しました。
「先輩は私に学校のこともおみちのことも随分と教えてくれました。それも優しく」
「私、優しかったのね」
私にこう言われると何か凄い意外な感じみたいでした。
「そんなに」
「ええ、それは確かに」
嘘じゃないです。私から見たら本当に。
「先輩が厳しかったこと、怖かったことなんてなかったです」
「だったらよかったけれど」
私の言葉を聞きながら微笑んでおられました。
「私なんかが。ちっちによく影響したのなら」
「先輩・・・・・・」
「ねえちっち」
今度は先輩から私に声をかけてくれました。お顔を真剣なものにさせて。それでもその優しい微笑みはそのままです。いつも私に向けてくれている微笑みは。
「私のことは色々と聞いていたわよね」
「それは」
「西の礼拝場のことも」
これは先輩御自身には一度も言わなかったですけれど。今先輩から話してきました。これは私にとっては思いもよらないことでした。
「聞いているわよね」
「聞いてます」
私はこくりと頷いて答えました。その通りだから隠すことはしませんでした。
「私、信じていませんけれど」
「けれど本当のことよ」
先輩のお顔が悲しいものになりました。
「あの時は。私、とても」
「先輩・・・・・・」
「入学してすぐだったわ」
その悲しい顔で私に言葉を続けるのでした。
「相手のことが許せなくてそれで」
「西の礼拝場で、ですか」
「気付かなかったの。相手がどう思うかなんて」
今聞いている言葉は
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