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戦国異伝
第二百四十三話 信長の読みその十二

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「幾らでもな」
「勝ち戦をですな」
「民達に観せますな」
「我等のそれを」
「そうする」
 信長は確かな声で家臣達に答えた。
「とはいっても次の戦はじゃ」
「夜明け前ですな」
「民達は逃れた場所で寝ていますな」
「その頃は」
「そうしていますな」
「おそらく鉄砲やらの音で起きるが」
 しかしというのだ。
「はじまった時はな」
「まだ寝ている」
「そうなっておりますな」
「まだ」
「そうしていますな」
「そうじゃ、しかしな」
 それでもと言った信長だった。
「戦になれば起きるわ。まあ夜明け前でよく観えぬが」
「民達は」
「しかしですな」
「戦をし」
「あの者達に観せて安心させますか」
「これからのことを」
「この戦で天下は泰平となる」
 信長は言い切りもした。
「天下を乱す者達がいなくなりな」
「ですな、それでは」
「天下を虐げる者達を滅ぼし」
「魔界衆を倒し」
「あの者達の心を安んじましょうぞ」
「そうしよう、天下はこれから安らかになる」
 こうも言った信長だった。
「間違いなくな」
「ですな、では夜になれば」
「その時にですな」
「飯を食い」
「そして寝ますな」
「そうじゃ、ただ飯は早く食う」
 その時にというのだ。
「そして早く寝てじゃ」
「夜明け前に起きて」
「そのうえで戦に備える」
「そうされますか」
「日が落ちれば寝てじゃ」
 そしてというのだ。
「真夜中に起きるぞ」
「それはまた早いですな」
「真夜中ですか」
「真夜中に起きて、ですか」
「そのうえで戦に備えますか」
「そうする、真夜中に起きて目を慣らす」
 信長はこうしたことも考えていた、ただ起きて戦に備えるだけではないのだ。目のこともしかと考えているのだ。
「夜明け前に攻めてくる訳はわかるな」
「はい、夜です」
「夜明け前はまだ夜です」
「その夜にですな」
「敵は攻めて来る」
「あの者達は闇の者、夜は得意ですが」
 それに加えてだったのだ。
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