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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
36話 黒刃の鷹、赫眸の将
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繋ぎましょう。もちろん、皆にもお願いするけれどね」


 口に出してもいない《コルネリオの救援》という目的を見透かされたかのように、クーネはにべもなくといった具合に語る。


「何を言っているか分かっているのか? あれは今のお前達のレベルではどうにもならないぞ?」
「それはお互いさまでしょう。命の恩人が危ない目に遭う方が、私としては問題なのよ……それに、ヒヨリちゃんを泣かせるような真似は許しませんから。以上!」


 何故か抗えないような威圧で押し切られ、クーネ達もコルネリオ救援に出向くことに。ヒヨリやティルネルは是非もないと言った具合の即決だった。ともあれ、如何にコルネリオがいようと強敵相手に単身で加勢に向かうというのは無謀が過ぎたか。感傷に惑わされると碌なことにならないものである。
 ともあれ、最速で到達し得るのはAGIに覚えのあるヒヨリかリゼルであるが、コルネリオを庇いつつ戦線を維持するには困難があろう。とりあえずはコルネリオの回復が済むまでの間、ティルネルを護衛に付けておくこととする。


「はぁぁぁッ!!」
「シャァァァッ!!」


 それ故に、俺とクーネが前線を構築する。
 苦々しげに防戦を強いられるコルネリオ、彼を追い詰める深紅の双眸の将軍に目掛けて吶喊、そしてソードスキルによる不意打ち。我ながら無謀な策に出たものだと頭を抱えたくなるのを堪えつつ、難なく後退した将軍を睨む。
 しかし、妙な充足感じみた安堵が心に湧き起こるような、そんな気さえしたが余韻に浸る間もなく緊張を十全に張り巡らせる。


「………やれやれ、そんなに私は頼りないかい?」
「そういうのは、もう少し善戦した状態で言ってくれ」


 後ろに言葉を投げかけつつ、それでも視線は逸らさない。
 ステータスの数値的な差は、ほんの僅差であればプレイヤー本来のスキルでカバーは可能だ。しかし、根本的にその数字の差が歴然としてしまえば、それは覆しようがなくなってしまう。更に言えば、将軍の技量は決して侮れるものではない。単調なルーチンで突進でもしてくれれば、いっその事その方が楽なのだが、こちらの静観の構えに対して微動だにせず慢心が一切感じられない。

――――しかし沈黙も束の間、突如として距離を詰められる。

 覚悟こそしていたが、圧倒的な速度の中にも幾つか情報が得られれば、ほぼ博打に近いものの対策は講じられる。
 下段に構えられた剣は即ち剣閃が上昇する軌道をとるものが多い。加えて。脇に捻られていないところから鑑みて薙ぎ払いではない。《斬り上げ》と見て間違いはないだろう。ならば、俺が取るべき手段は自ずと定まってくる。


「ゼァァッ!!」


 間合いに迫るまであと一歩という段階で、ここぞと見込んだ瞬間に剣を振り降ろす。
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