第3章 黄昏のノクターン 2022/12
36話 黒刃の鷹、赫眸の将
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手じゃない筈だ」
「了解ッス! 勝てるって分かればあとは俺等の独壇場ッスから! 任せてくださいよセンパイ!」
「あ、おい!? ………ポーション飲まなくて良かったのか?」
窮地を脱して息を吹き返したマフィアどもは、匕首を握ったアドルフォを筆頭に獲物を求めて乱戦の中へと突撃してしまう。一応は俺でも彼等の平均HPを確認できるのだが、看過できないような損耗は見られなかったから良しとしておこう。
その後も俺達は三回ほど、他のPTの戦闘に介入してフォールンに打撃を与えては自由に行動できる遊撃隊の数を増やしていった。やがて、数的不利は覆されたものの、未だに敵方の抵抗は凄まじい。将軍と戦列を共にすることの誉れか、あるいは単純に粘り強いのか、その根拠は度し難いが、少なくとも一筋縄ではいきそうにない。
「燐ちゃん、あそこ見て!」
ヒヨリの叫びで思考が中断され、咄嗟に指差す方向を見る。
それは倉庫側の大扉から押し寄せる暗色の革鎧の一団、フォールンの増援だ。
「まさか、ボス部屋の入口から入ってくるとはな………」
「リン君、どうするの? もし一定時間ごとに敵が増えるようだったら、何時まで経っても終わらないわよ?」
「……終わらないなんてことはない。絶対に何かある筈だ」
現状を打開する何かが、このフィールドにある筈だ。いや、あってもらわねば困る。
懸命に、周囲と異なるギミックとなり得るオブジェクトを探すが、機材関係も完全に大破しており、役立つモノなど見受けられない。ならば敵対的NPCはどうだろうか、際立って特殊な者はフォールンに至っては、側近二人を相手に大槌を振るう魁偉と、コルネリオと切り結ぶ将軍のみ。この戦闘において何かしらの動きを齎すならば、この両名以外に考え付くものこそないが、だからといって確証も無い。選択を決めあぐねているうちに、視界に映る戦況の片隅と、複数示されたHPゲージに連動して変調が生じた。
それまで余裕をもって戦闘を継続していたコルネリオが、将軍から手痛い一撃を受け、それに応じてHPゲージが危険域へと落ち込む。膝をつくマフィアのボスに凶刃が振り降ろされるも、漆黒の刃を盾に辛くも致命傷を凌ぎ、耐え忍ぶ。
その姿がふと、第一層ボス攻略にて散った《一人の騎士》を想起させた。彼には未だに謎こそ多いものの、それを知る術はもう残されてはいまい。或いは、彼があの戦いを生き延びていたならば、俺は彼と同じ位置に立って会話が出来ただろうか。叶うはずもない願いが、今になって蘇るのを実感しつつ、しかしそれを振り払う。
――――過去に戻ることは叶わないが、少なくとも、後悔だけはしたくない。
「クーネ、増援の相手を頼む」
「………じゃあ、ニオが到着するまでは一緒に場を
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