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恐怖の掃除
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第一章

                     恐怖の掃除
 北村冬彦の趣味ではないがとりあえず絶対にしなければならないとまで命を賭けていることはだ。彼の年頃、男子高校生ならばだ。誰もがそうなっていることである。それが何かというとだ。
 成人漫画にアイドルの写真集、それにそれ以上に過激な写真集やその手の雑誌等である。そうしたものを必死に集めてしかも楽しんでいた。
 彼はそうした分野においては他者の追随を許さない。この年頃で、しかも何時の時代でも言われることだがその仇名はだ。スケベ博士というだ。非常に恥ずかしいがそれでいて名誉でもあるだ。その仇名を授けられてもいた。当然ながら授けたのはだ。クラスの悪友達である。
 そのスケベ博士とまで言われる冬彦の蔵書は恐ろしいまでのものがあった。ベッドの下にはその成人漫画だのアイドルの写真集だのアダルトビデオの雑誌等が隠されているがだ。質量共に半端ないものだった。
 ブルマー、セーラー服、バニーガール、競泳水着、スクール水着、ナース、スチュワーデス、チャイナドレス、ミニスカポリス、メイド、女医、くの一、浴衣、コギャル、ビキニ、バドワイザー、タイツ、チアガール、OLといったコスプレものは全て押さえしかも学生ものから熟女、人妻、それも若妻や新妻から年配まで、未亡人、年上のお姉さん、お兄ちゃんっ娘、幼馴染、近親相姦、猫耳、外国人、ふたなり、レズまでだ。とにかくあらゆるジャンルに精通していた。その彼の知識と造詣、そして独特の嗜好の前には誰も勝てはしなかった。まさに無敵だった。
 そのエロに対する貪欲なまでの欲望、それに飽くなき執念もまた彼の誇りであった。まさに校内一のそういうジャンルにおける識者だった。その彼の前に敵はいないように思われた。
 しかしだ。ある日のことだ。
 彼が学校から帰るとだ。部屋の中が何かが違っていた。見るとだ。
 部屋が奇麗になっている。窓も壁もぴかぴかだ。掃除なぞ全くしない彼の部屋はそれはそれは汚いものである。その部屋が輝かんばかりになっているのだ。

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